2013年12月21日土曜日

モールス アメリカ/イギリス映画


2010年公開(日本公開は2011年)の「モールス」。二昔前の「モーリス」っていう耽美な映画を思い出し、人の名前か、なんて考えましたが、モールス信号のことでした。監督マット・リーヴス、主演はコディ・スミット=マクフィークロエ・グレース・モレッツ

1980年代のニューメキシコ州ロスアラモス。雪に閉ざされた田舎町に住む12歳の少年オーエンは、学校でいじめられ孤独な毎日を送っていた。そんなある日、隣にミステリアスな少女アビーが引っ越して来る。寒い中彼女はいつも裸足だった。アパートの中庭で出会い仲良くなった二人は、壁越しにモールス信号で会話するようになる。そのころ町では残酷な連続猟奇殺人事件が起きていた、、、。

ある日の夕方、私は何となくダルく少し眠かった。こういう時は静かな環境よりも、つまらない映画やスポーツを観たりするとよく眠れます。この日もそういう睡眠導入剤のような映画を求めケーブルテレビを探っていて、この映画に行き当たりました。

チャンネルの解説には「連続猟奇殺人と、幼いふたりのピュアな初恋の行方を描く。出演は「キック・アス」のクロエ・グレース・モレッツと「ザ・ロード」のコディ・スミット・マクフィー」なんて、つかみどころのないことが書いてあるのも気に入りました。

しかし映画が始まると眠気は吹き飛んでしまいました。わけもわからず冒頭シーンからひきこまれ「なんだこれは?」と動揺しているところへ、オーエン少年が登場。この少年の眼の動きがとてもいいのです。そして裸足の少女アビー。もうこの二人から目が離せなくなってしまいました。

このアビー役のクロエ・グレース・モレッツはリメイク版「キャリー」を演じているのですね。今後も注目の若手です。ナタリー・ポートマン以来の衝撃を受けました。

原作「MORSE -モールス-」は、2008年スウェーデンで先に映画化されています(邦題「ぼくのエリ 200歳の少女」)。今度スウェーデン版も観てみよう。

5段階評価で4つ。キャスティングの勝利ですね。偶然いいものを見つけました。


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2013年12月18日水曜日

ソロモンの偽証 宮部みゆき著


宮部みゆき渾身の長編小説「ソロモンの偽証」。1冊700ページ超のハードカバー本で3冊という、手に取るのをちょっと躊躇ってしまいがちなボリュームですが、そこは安心の宮部さん、いつも通りスラスラと読ませてくれます。

1990年クリスマスの朝、城東第三中学校で雪に埋もれた死体が見つかった。遺体は同校2年の男子生徒。彼は一月ほど前から不登校を続けていた。発見状況から見て自殺として処理され、普段の日常へと回帰していくかと思われた新学期、匿名の告発状が届く。「彼は自殺じゃない。本当は殺されたのだ。ボクはそれを見ていた___」。やがてマスコミでも報道され、学校が生徒が家族が暗闇に飲み込まれてゆく、、、。

第1部「事件」ではその副題の通り、城東第三中学校のまわりで次々と事件が起こります。落ち着いたかと思うとまた事件。現実であったなら、生徒も先生もその家族も大変だろうと同情したくなる展開です。

そんな大事件もやはり月日が経つと風化するもの。関係者も意識、無意識の別はあるものの、事件の記憶は頭の片隅に追いやり日常生活を営むわけです。そうしないと生きづらいですからね。そう、物語の中でも自分が知り得た決着に納得出来ず、生きづらい人がいるのです。事件の真相を、あるいは深層を知りたいと願うことから行動を起こす生徒がいました。

その生徒「藤野涼子」さんは事件を検証するため、夏休みを利用した課外授業という形で裁判を開くことを決意します。そして事件を捜査、検証する様子を描くのが第2部「決意」。つづく第3部「法廷」ではまるごと法廷劇です。そこで誰もが薄々感づいている真実が明かされていくわけですが、、、。

第1部冒頭の一節「子供って何も知らない。だけど、子供はほんとは何でも知ってるんだ。知りすぎるくらい__フィリップ・K・ディック(まだ人間じゃない)」の言葉は真実を突いていると思います。そうなんですけど、弁護人「神原和彦」くんのようなスーパー中学生いるかなぁ、、。

学校のあり方、マスコミ報道のあり方、保護者のあり方。軽いミステリの仮面の下で、そういったものを問うた作品なのでしょう。丁寧に描くために、この長さが必要だとは思いますが、少し冗長かもな、、という印象は否めません。

5段階評価で3つ。安心の宮部さんですからね。面白いし、読むのには苦労しませんけど。


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2013年12月11日水曜日

アーティスト フランス映画


2011年公開(日本公開は2012年)のフランス映画。監督ミシェル・アザナヴィシウス、主演ジャン・デュジャルダンベレニス・ベジョ。監督さんも主演男優、女優さんとも、今作まで知りませんでした。第84回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演男優賞、衣装デザイン賞、作曲賞の5部門を受賞。長い歴史を誇るアカデミー賞で、作品賞をとった初めてのフランス映画となりました。

1920年代後期のハリウッド。サイレント映画の大スター、ジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)は駆け出しの女優ペピー・ミラー(ベレニス・ベジョ)と出会い意気投合。しかし映画がサイレントからトーキーへと急激に移り変わる中で、ふたりの運命は明暗をわける。

時代の波に乗ったペピーはスターの座をつかむ。しかしサイレント映画にこだわったジョージはスターの座から転げ落ちてしまう。妻を失い、屋敷を失い、質屋通いで食いつなぐジョージ。彼に残されたものは愛犬と、かつての栄光、サイレント映画のフィルムだけだった、、、。

1927年から1932年までの映画の街ハリウッドのお話。この1927年というのは世界初のトーキー長編映画「ジャズ・シンガー」が公開された年なんですよね。時代の転換点だったのでしょう。映画革命の裏で職を失った俳優や技術者、または職を得た人、悲喜こもごもだったかと想像します。

主人公のジョージは時代掛った男前といった感じでいい味出してますし、ヒロインのペピーのキュートさにも心奪われますが、なんといっても愛犬くんの演技が最高であります。彼に助演男優賞をあげてもらいたかったですね。

映画は全編モノクロ、音声はほぼ音楽のみ。ほぼ、といったのは、少しだけサウンドが出る場面があるのです。それがとっても効果的で、トーキー映画が初めて上映された当時を疑似体験したような気になります。気のせいですが。

5段階評価で4つ。モノクロって不思議です。色が見えてくる時があるから。


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2013年12月6日金曜日

シャッター・アイランド アメリカ映画


2010年公開「シャッター・アイランド」。監督マーティン・スコセッシ、主演レオナルド・ディカプリオ。 このコンビの作品は過去に「キング・オブ・ニューヨーク」「アビエイター」「ディパーテッド」とあり、本作が4回目になります。スコセッシ映画といえば、ひと昔前はロバート・デ・ニーロの名が浮かびましたが、最近はディカプリオなのですね。

正直なところ、私はディカプリオを苦手としていて、彼の主演作を観ることは殆どありません。アカデミー助演男優賞にノミネートされ、出世作といえる「ギルバート・グレイプ」での知的障碍者役はとても好きでしたけどね。

精神疾患のある犯罪者を隔離幽閉する孤島「シャッターアイランド」。そこで一人の女性が忽然と消えた。残された謎のメッセージ「67は誰だ?」。事件捜査のため連邦保安官テディ・ダニエルズ(レオナルド・ディカプリオ)は新しい相棒チャック(マーク・ラファロ)ととも島を訪れる。物々しい警備の収容所。何かを隠している様子の院長コーリー(ベン・キングスレー)以下の職員たち。疑心暗鬼に陥ったテディは、次第に相棒のことも信じられなくなっていく、、、。

ディカプリオ見直しました。いい感じのオッサンになっています。ちょっとジャック・ニコルソンに似てきたか、と思いました。それと院長コーリーのベン・キングスレーがいい。胡散臭さ満点であります。

いわゆるドンデン返し系の映画です。気持ち悪いシーンを我慢して最後まで観ましたが、あまりにも普通なラストでちょっと肩透かしを食ったような気分になりました。最後にもうヤマあるのでは、と期待したのですけど、、、。

5段階評価で2つ。スコセッシはやはり「タクシードライバー」なんですよ。


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2013年11月30日土曜日

さんかく 日本映画


監督は「机のなかみ」「純喫茶磯辺」に続くオリジナル脚本3作目の吉田恵輔。主演は高岡蒼甫田畑智子小野恵令奈のお三方。小野さんは今作の出演がAKB48を辞めるきっかけになったといいます。

30歳の百瀬(高岡)と29歳の佳代(田畑)は同棲して2年。マンネリ感が漂い始める時期の二人の元へ、佳代の妹で中学3年生の桃(小野)が、夏休みを利用して遊びに来た。自由奔放な桃に振り回される百瀬と佳代。百瀬は桃の誘うような仕草にドギマギし、次第に惹かれていく。しかし夏休みも終わり、桃は実家に帰ってしまうのだが、、、。

タイトル「さんかく」が示す通り男女の三角関係のお話なんですけど、普通の三角関係じゃなく想いが一方通行なのです。桃が帰った後、百瀬と佳代は別れてしまうのですが、佳代は百瀬が大好きで忘れられません。対する百瀬は桃へ気持ちでいっぱい。二人ともそれぞれの相手に対し、ホントにしつこいです。

しかしこの二人を馬鹿な奴だと笑うことができるでしょうか。恋をしたことのある人ならば、程度の差こそあれ、この二人の気持ちは理解できるのではないでしょうか。一歩間違えば犯罪になってしまいますけど、器用な人ばかりが住む世の中ではないのです。

小悪魔のような小野さんがいいですね。女性からは嫌われる女かもしれませんが、多くの男性は惑わされてしまうようなシチュエーションではないですかね。後ろめたさを感じてしまうことも気持ちを高ぶらせる要因になります。

そして田畑さんの演技が光ります。しっかり者のお姉さんからストーカーじみた女へ、そしてラストカットの表情。この人ホントいい女優さんですね。

5段階評価で4つ。こういう作品が公開されているうちは、まだまだ日本映画も大丈夫だと思います。


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2013年11月26日火曜日

バタフライ・エフェクト アメリカ映画


2004年公開のアメリカ映画。「バタフライ効果」をテーマにしたストーリー。日本での公開は2005年です。

バタフライ効果とは「ある場所での蝶の羽ばたきが、そこから遠く離れた場所の天候に影響を及ぼす」。言い換えれば「初期条件のわずかな差が時間とともに拡大し結果に大きな違いをもたらす。それは予測不可能である」というような感じですね。結構有名な説で広く世に知られていると思います。

日常生活の中で、たまに記憶が飛んでしまう少年エヴァン。正気に戻った時に身の回りの物事が経過していて戸惑うが、大きくなるにつれその症状は無くなった。そして大学生になったエヴァン。ある日、ずっと書き続けていた日記を読んでいると文字が歪み、子供時代の記憶が欠落していた場面に戻る。

日記を読むことでその時の自分に戻れると気づいた彼は、自分が選択を誤ったせいで、友人たちが幸福でない今を生きていることを知り、過ちを正し未来を変えようと奔走する。しかし全員が救われる未来はなかなか手に入らない。最後に選ぶターニングポイントは、、、。

これは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のようなタイムスリップものとは少し違い、現在の肉体が過去へ行くわけではありません。意識だけが移動するので、身体は昔の子供の姿で心が今の自分になるのです。その昔記憶が飛んでいたのは未来の自分が意識に入り込み、心が入れ替わっていたからなんですね。

主人公エヴァン、毎回鼻血を出しながら過去へ飛び頑張ります。しかしこっちを立てればあっちが立たず、といった感じで、すべて丸く収まる未来はなかなか手に入りません。結末が読めず、最後までハラハラ・ドキドキが止まりませんよ。

この映画を観て、人生は常に選択の連続なんだと改めて思い知らされました。「あの時ああすればよかった、そしたら今こんなことには、、、」なんて考えたことが、誰でも何度かあるはずです。

人生には大小様々なターニングポイントが仕掛けられています。選択をやり直したいことは数多くあれど、それが今以上の人生に繋がるかといえば、それは全く保証されません。常にベストの選択をしてきたのだ、そう思って生きていくのが精神衛生上、最もすぐれた選択なのでしょう。

売り物のDVDにはエンディング違いの「ディレクターズカット版」が同梱されています。究極にはこのバージョンもアリだと思いますけど、綺麗に終わっている公開版のエンディングが私は好きですね。

今作が好評だったためか、続編が2つ作られています。続編といっても「過去へ飛んで未来を変える」っていう設定が同じだけで中身は別モノです。この続編2作品には大きな期待をしてはいけません。

5段階評価で4つ。近頃人生にお悩みの方、そうでない方、ともにオススメします。観る選択と観ない選択、どっちがいいかわかりませんがね、、、。


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2013年11月21日木曜日

ライフ・イズ・ビューティフル イタリア映画


1997年イタリア映画。日本での公開は1999年です。ジム・ジャームッシュの「ダウン・バイ・ロー」「ナイト・オン・ザ・プラネット」などで印象に残る演技をしていたロベルト・ベニーニが監督・脚本に加え、主役のグイドを演じています。カンヌ映画祭グランプリ、米国アカデミー賞の主演男優賞、外国語映画賞など、受賞は多数。

舞台は1939年の北イタリア。陽気な性格のユダヤ系イタリア人グイドは、小学校教師ドーラと駆落ち同然で結婚。可愛い息子ジョズエにも恵まれた。しかしそんな幸せな日々も、第二次世界大戦の足音に掻き消される。ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害で、3人は強制収容所に送られてしまった。

母と引き離され不安がるジョズエにグイドは「これはゲームなんだ。いい子にしていれば点数がもらえる。ゲームに勝ったら本物の戦車に乗っておうちに帰れるんだ」と嘘をつく。いつ終わるともわからぬ絶望的な収容所生活を、グイドは持ち前の明るさでジョズエを励まし、自分を励まして生き抜いていく。そしてついに戦争が終わる、、、。

物語前半は完全な喜劇で、監督主演のロベルトさんの独壇場。あの手この手でドーラに近づきモノにする様を、面白おかしく描いています。このままドタバタなお話なのかと油断していると、後半は収容所に送られてシリアスな展開に。といっても舞台がシリアスになっただけで、主人公のキャラクターは変わらないんですけどね。

息子のジョズエ役のジョルジョ・カンタリーニが可愛い。同じイタリア映画の傑作「ニュー・シネマ・パラダイス」のトトを彷彿とさせます。収容所は男女別にされるので、後半はずっと父と息子の物語なんですよね。めげない父と、父を素直に信じる息子。

終戦を迎え、映画もラストシーンへ。離ればなれの家族はまた一緒になれるのか。感動のエンディングは、、、。

5段階評価で5つ。「映画とは斯くあるべし」といいたくなる、そんな映画です。ラストで号泣してしまいました。父子の物語は身につまされます。


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2013年11月14日木曜日

魔法少女まどか☆マギカ TVアニメ


2011年1月から4月まで毎日放送 (MBS) で放送された全12話の深夜アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」。この手のアニメが深夜にやっていることは知っていましたが、まさか自分が観ることになるとは思いもしませんでした。結構なブームになってたみたいですね。

どんな願いでもひとつだけ叶えてもらえる、魔法少女になる契約さえすれば、、、。社会の裏側に蔓延る「魔女」を倒す使命が課せられた「魔法少女」。それぞれの理由から戦いに身を投じる少女たち。「魔女」とはなんなのか、そして「魔法少女」とは、、、。

少女が変身して特別な力を持ち悪と戦う、という物語は、昔から繰り返されてきたパターン。「セーラームーン」なんてまさにそんな話ですよね。あれも凄く人気がありました。

主人公「まどか」はクラスに埋没しているような中学2年生で、魔法少女じゃないんですよ。普通主人公は第1話で力に目覚めるものでしょう?他の魔法少女は出てくるんですけど、彼女はなかなか契約しないんです。

いかにも深夜アニメって感じの絵柄と声で、観はじめたときは不安になりました。それが案外スルスルと進み、そして3話目で物語が大きく動き出します。その辺から引きこまれて、12話一気観でしたね。

この可愛らしい絵柄に騙されてはいけません。こんなアニメなんか、、なんて食わず嫌いでいる方にこそ、観ていただきたい作品です。全く予備知識なしに観たほうが楽しめると思うので詳しくは書けませんが、よく練りこまれた世界観が素晴らしいですよ。

5段階評価で4つ。こういうアニメをいい、なんていうのは恥ずかしいんですが、、、。ちょっと衝撃を受けたので、、、。


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2013年11月8日金曜日

しあわせの書 迷探偵ヨギ ガンジーの心霊術 泡坂妻夫著


私はNHKのラジオ深夜便のファン。読書の秋ということで、今週はゲストが「私の一冊」をテーマに語る、というコーナーを連日放送しています。数日前のゲストは元バレーボール選手の益子直美さんでした。彼女の一冊がこの泡坂妻夫著「しあわせの書」。

この本には内容にも関わりのあるちょっとしたトリックが仕込まれています。それを使い、益子さんがアナウンサーにマジックをして見せてました。それが聴いているだけでオドロキなのですよ。翌日、私はすぐ図書館へ走りました。

泡坂さんの作品を読むのは初めて。内容はホンワカとした推理小説。登場人物がなんともいえずユルくて好感が持てます。本書は240ページほどで会話文も多くスラスラと読めますよ。それ以上言えません。苦労して書かれたのだろうなと想像します。

益子直美さんはバレーボールを引退して芸能界入りした当初、人と話すのが苦手だったそうです。悩んでいる時、古くからの友人にこの本をプレゼントされ、道が拓けたと言っていました。ラジオでアナウンサー相手にやったマジックをネタに、初対面の人とも簡単に仲良く慣れたそうです。

5段階評価で3つ。気楽に読めます。そして謎に気づいた時、ため息が出ることでしょう。


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2013年11月4日月曜日

ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル


トム・クルーズ主演の人気シリーズ「ミッション:インポッシブル」4作目。2011年に公開されました。第1作は1996年ですから足掛け15年。当時30代だったトムさんも、もう50歳ですよ。今作でも身体張ってます。

ある事件でモスクワの刑務所に囚われているイーサン・ハント(トム・クルーズ)。IMFの仲間が彼を救助し、イーサンに新たな任務「核兵器テロの阻止」が与えられる。テロリストの情報をつかむためクレムリンに潜入するIMFチーム。しかし失敗に終わり、舞台はドバイ、そしてインドのムンバイへ。核弾頭を載せたミサイルが発射されてしまうが、、、。

適役カート・ヘンドリクスは、あの「ミレニアム3部作」のミカエル・ニクヴィスト。50歳前後でトムさんと同年代なんですが、彼と比べるとトムさんは若々しいですね。ミカエルさんは歳相応の素敵なオジサマで、どっちがいいかは判断のつきかねるところです。

ドバイにある世界一の超高層タワー「ブルジュ・ハリファ」でのシーンは圧巻です。そこ登りますか、と。高いところが苦手な私は目が眩みました。砂漠にそびえ立つタワー。なんだか北斗の拳のワンシーンを思い浮かべてしまいました。

今作も息をつかせぬピンチ、アクションの連続で飽きさせません。お金かけてるだけあるなー、って感じです。シリーズ物は安心して観られるので嫌いじゃないですけど、心震えるような体験を望むのは欲張りなんでしょう。

5段階評価で3つ。気楽に2時間ちょい、損した気にはなりませんよ。


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2013年10月29日火曜日

メン・イン・ブラック3 MIB3


ウィル・スミストミー・リー・ジョーンズ主演の「メン・イン・ブラック」シリーズ。シリーズといっても「」で終わったのかと思ってましたよ。10年の沈黙を経て、待望?の「」が2012年に公開されました。

正直、いまさらMIBでもないだろ、と思っていました。大体トミー・リー・ジョーンズはもう60後半でしょ、アクションできるんですか?と思っていました。なるほど、定番とはいえ、いい設定を思いつきましたね。

かつてエージェントK(トミー・リー・ジョーンズ)が月面の牢獄に送った「ボグロダイト星人・ボリスジェマイン・クレメント)」が脱走し、若き日のKを抹殺するため、タイムマシンを使い過去へと向かう。そして存在自体が消えてしまうK。ただひとりKが消えたことに気づいたエージェントJ(ウィル・スミス)は、Kを助けるため過去へ、、、。

主に舞台は過去(1969年)なわけです。若き日のK役ジョシュ・ブローリンが渋いですよ。アポロ11号(人類初の月面着陸のやつですね)発射の日がクライマックス。JとKとの意外なつながりもあり、ラストはMIBシリーズなのに少し胸が熱くなったりして、、、(失礼)。ネタバレはつまらないので、詳細は控えます。

5段階評価でつ。苦し紛れの続編攻撃かと思いきや、いやいや、よくまとまっていて飽きさせません。ハリウッドは未だ死なず。


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2013年10月22日火曜日

死もまた我等なり/クリフトン年代記第2部 ジェフリー・アーチャー著



クリフトン年代記、待望の第2部です。

第1部終わりで「やったーアメリカに着いたー」と思った矢先、警察に拘束されてしまったハリー。その急展開に続き、今作はさらなるジェットコースターに乗ります。

ハリーは別人「トム・ブラッドショー」として裁判所に出廷、6年の実刑判決を受け投獄される。嫌な看守、親切な囚人仲間。その裏で婚約者エマはハリーの生存を信じ、単身ニューヨークへ乗り込む。エマの兄で親友のジャイルズは軍隊へ。母メイジーの躍進、本当の父かもしれないヒューゴーの暗躍。アメリカはヨーロッパ戦線への参戦を決め、そしてハリーの行方は、、、。

なんでしょう、とても面白いのですよ。アーチャーさんですから。当然の一気読み、なんですが、、、。

第2部に入り、ストーリーはお伽話度がさらに強まってまいりました。ハリー、エマ、ジャイルズ、メイジーの主要キャラクターはかなり強い女神さまに守られていると思われます。羨ましいぐらいに。第1部でもそういったご都合主義は随所に顔を出してました。それでもそれを納得させるだけの深みというか、奥行きが感じられたのですが、今作は「え、そうなの、そんな簡単にうまくいっちゃうの?」てな具合に、あまりに安直なのです。

そんな展開の中で光るのは、本書唯一の悪役とも言えるヒューゴー。とってもイヤな奴なんですけど、一番人間味のある血の通った人物となっているのが皮肉です。お伽話の中に出てくるただひとつの現実。彼の章を読むのも辛かったほど嫌っていたのに、180度転換して愛着あるキャラクターに変わってしまいました。彼にはとことんヒール役を演じて欲しかったのですが、、、。

第1部を読み終えた時「ケインとアベル」以上の傑作か、と期待に胸を膨らませたあの夜。いまはちょっとトーンダウンしております。イギリス本国ではすでに第3部まで出版されてるそうですが、何部で完結するのでしょうか。エマって「ロスノフスキ家の娘」のフロレンティナとかなり似てますよね?性格とか行動とか。

5段階評価で3つ。またもやいいところで話が終わります。この先、期待してもいいのですよね?


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2013年10月19日土曜日

ひまわり イタリア映画


ソフィア・ローレンマルチェロ・マストロヤンニ主演、1970年公開のイタリア映画「ひまわり」。監督はヴィットリオ・デ・シーカ、音楽はヘンリー・マンシーニ。おふたりとも巨匠と呼ぶに相応しいお方。監督は他に「自転車泥棒」「終着駅」「昨日・今日・明日」などで知られています。音楽のヘンリー・マンシーニはさらに有名ですね。「ティファニーで朝食を」「酒とバラの日々」「ピンクパンサー」などなど。

第2次大戦中、海辺で出会ったジョバンナと兵士アントニオはすぐに結婚。結婚した兵士に与えられる12日間の休暇を過ごします。楽しく情熱的な日々はあっという間に終わり、アントニオは寒さ厳しいロシア戦線へ。

アントニオの安否もわからぬまま数年が経ち、やがて終戦。彼の写真を手に、引き上げ列車の着く駅のホームをさまようジョバンナ。しかし彼の姿は見当たらず、、、。彼の生存を信じ、諦めきれない彼女は少ない情報を手掛かりにソ連へ向かいます。途中列車から見える一面のひまわり畑。

あちこちさまよった末、ようやく彼の居場所に辿り着きます。しかしそこに居たのは若いロシア人女性と小さな子供。その女性は雪の中で倒れている瀕死のアントニオを助けてくれた人でした。そして駅のホームでついにアントニオとジョバンナは再会。ホームの端と端とで見つめ合うふたり。そこでジョバンナがとった行動は、、、、。

反戦と切ないラブストーリー。結ばれる運命のふたりを容赦なく引き裂く戦争。勝っても負けても武器商人以外は仕合わせになれないのが戦争。それでもなぜ人は戦うのでしょうか。日本の漫画/アニメ「はいからさんが通る」もこんな感じの設定がありましたね。あれは日露戦争でしたか。紅緒と少尉、懐かしい、、。

この映画はなんといってもソフィア・ローレンですよ。冒頭の華やかなジョバンナとその後のジョバンナ。演技の使い分けが見事です。疲れた未亡人風でも、美しさは微塵も損なわれていないのがまた凄い。彼女のような圧倒的な女優というのは、今後もう出てこないのではないでしょうか。

私の好きなシーン。ロシアへの出征前、トイレで抱きあうふたりを映す薄汚れた鏡。その鏡に一筋の亀裂が入っているのです。その後のふたりを暗示してるような、気の利いた演出だなぁと思いました。神は細部に宿るのです。

ラストシーンのジョバンナの表情、そしてエンドロールの一面のひまわり畑。満開に揺らめくひまわりが、もの悲しい、、。ヘンリー・マンシーニのテーマソングがさらに感情を揺さぶります。

この映画のせいで、満開のひまわり畑を見ると胸が詰まってしまうようになりました。

5段階評価で5つ。これぞ不朽の名作というやつでしょう。ソフィア・ローレンの美しさが、ただただ光り輝きます。


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2013年10月16日水曜日

まちがい言葉 おかしい言葉 宇野信夫著


宇野信夫著「まちがい言葉 おかしい言葉

宇野さんがすでに故人で、お亡くなりになったのはいまから20年以上も前のこと。私が宇野さんを知ったキッカケは山本夏彦さんの本です。どの本でどのように書かれていたのか思い出せませんが、宇野さんのことを絶賛しておりました。

宇野さんは戯作家。歌舞伎を書いたりするかたわら、エッセイも多数残しています。この本もそのひとつ。気の利いた言葉を紹介するとともに、巷の言葉の誤用を嘆いておられます。

『ら』抜けと『も』抜け」という話。以下抜粋。

___この頃もっとも耳ざわりなのは『ぴったり』ということを『ぴったし』という。『ぴったし』は日本語ではあるまい。それから『ら』を抜かす。例えば『見られる』を『見れる』___。テレビで『まだまだ食べれるぞ』と唄っている。これが全国に広まると『食べられる』がかえって間違いになってしまうような気がする___」。

この本が発行されたのは昭和63(1988)年。2013年現在、まだ「られる」が間違いとは言われてませんが、宇野さんの心配したとおり「れる」の侵食率はかなり高くなっています。そのうち「られる」は敬語だけにしか用いなくなるかもしれませんね。

あれは5年くらい前だったか、映画館のロビーでの出来事。隣に母子が座っておりました。しばらくして、子供がトイレに行くと駆け出し、母親がその背中を追いかけるように「〇〇、ひとりで行けれる!?」と大声で呼びかけました。私は思わず「えっ??」と声が出るほど驚きましたね。「」抜きだけじゃなく飽き足らず、必要のない「」を入れてしまうのかと。何事も「れる」と使わないと気がすまないのでしょうか。

5段階評価で4つ。血の通った日本語がいくつも登場します。


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2013年10月13日日曜日

「夏彦の写真コラム」傑作選① 山本夏彦著 藤原正彦選


コラムを書かせたら右に出るものはいない「山本夏彦」。2002年87歳で鬼籍に入るまでコラムを書き続けました。

夏彦翁はよく「辛口コラム」と評されます。確かにそういう面もありますが、何事にもただ文句をいい、怒りをぶちまけているだけの「コメンテーター」の類ではありません。彼らのように、自分のことを棚に上げ偉そうに振る舞う、そういった嫌味なところがないのですよ。常々ご自身のことを「ダメの人」と言ってたくらいですからね。

この本の中で私の好きなコラムをひとつ、抜粋で紹介します。タイトルは「汚職で国は滅びない」。

リベートや賄賂というと、新聞はとんでもない悪事のように書くが___、リベートは商取引にはつきもので悪事ではない。それを貰う席にいないものは悪く言うが、それは嫉妬であって正義ではない

我々貧乏人はみな正義で、金持ちと権力ある者はみな正義でないという論調は、金持ちでもなく権力もない読者を常に喜ばす。ただで喜ばすことができるから、新聞は昔から喜ばして今に至っている。これを迎合という

戦前の新聞は政財界を最下等の人間の集団だと書くこと今日のようだった。それをうのみにして若者たちは政財界人たちを殺したのである。汚職や疑獄による損失は、その反動として生じた青年将校の革新運動によるそれと比べればものの数ではない。___青年将校たちの正義はのちにわが国を滅ぼした。汚職は国を滅ぼさないが、正義は国を滅ぼすのである

今も新聞は政治家を人間のくずだと罵るが、我々は我々以上の国会も議員も持てない。政治家の低劣と腐敗は、我々の低劣と腐敗の反映だから___

夏彦翁は世の中に漠然と漂う多数の声、常識に真っ向から切り込みます。それにしてもマスコミの情報操作というのはオソロシイですね。意識してのことなのか無意識なのかはわかりませんが、、。

このコラムが書かれたのは昭和55年(1980年)ですけど、今の世も何も変わってませんよね。

5段階評価で5つ。何年経っても色褪せないコラムです。


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2013年10月10日木曜日

車谷長吉の人生相談〜人生の救い〜 車谷長吉著


以前ご紹介した「赤目四十八瀧心中未遂」の中でも触れました、車谷長吉さんの人生相談本「人生の救い」です。朝日新聞の土曜別冊beの人生相談コーナー「悩みのるつぼ」で掲載されていたもののまとめ本。これ日曜日だと記憶してましたが土曜日でした。

何人かの回答者がいる中で、車谷さんの回答は毎回鮮烈でした(車谷さんは月に1回の登場だったかと)。

運、不運で人生が決まるの?」相談者は、就職難に直面し生まれた年の不運を嘆く22歳の大学4年生。

それに対する回答は「世の中に運、不運はつきもの。不運を嘆くのは虫のいい考え、甘い、覚悟がない」と畳み掛け「この世の苦しみを知ったところから真の人生が始まる」とつづきます。さらに「真の人生を知らずに人生を終えてしまう人は醜い人。己の不運を知ったものだけが、美しく生きている」と結論づけます。

この手の相談の回答として「幸運と不運は表裏一体。禍福は糾える縄の如しという言葉もあるでしょう。 まじめに生きていればきっといいことがありますよ」なんてものを期待する人も多いのではないでしょうか。

対して車谷さんの回答は、一瞬救いのない回答に思えます。しかし心に迫ってくるのはどちらでしょうか。車谷さんはキレイ事ではない世の中の真理をついています。みんなの胸の奥にある、あまり触れてほしくない部分を、ナイフで抉るような言葉の数々。

車谷さんの言葉が心に響かない人は、きっとこれまで幸運な日々を過ごしてきたのでしょう。そういう人は読まなくていいと思います。

人生になんとなく行き詰まりを感じている人、これまで耳にした人生相談が「ちょっと違うよなぁ」なんて感じている人は、一度本書を読んでみてください。スッと飲み下せるかもしれません。まあそれは幸運な人ではない証になってしまいますが、、、。

5段階評価で4つ。前半は満点ですけど、後半なぜか踏み込みが甘いと感じるので。


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2013年10月9日水曜日

ずーっと ずっと だいすきだよ ハンス・ウィルヘルム絵と文

ずーっと ずっと だいすきだよ 」ハンス・ウィルヘルムさんの絵本。彼の作品は他に「そんなのずるいよ!タイローン 」「タイローンなんかこわくない 」「ぼくたち また なかよしさ! 」などがあります。

表紙から想像できるように、内容は主人公「ぼく」と犬の「エルフィー」とのお話。

「ぼく」と「エルフィー」は一緒に大きくなりました。幼児だった「ぼく」と子犬の「エルフィー」。ただ人間と犬では成長のスピードが違い、エルフィーのほうが早く大きくなります。

一緒に遊び、いたずらをし、そんな楽しい月日はどんどん過ぎ、いつしか「ぼく」はエルフィーより大きくなる。エルフィーは年を取って太り、散歩を嫌がるようになりました。そして元気がなくなってきたエルフィーを獣医さんへ連れて行きました。ある朝「ぼく」が目覚めるとエルフィーは、、、。

ここまでのストーリーは、よく聞く話でもあり、また多くの人が実際に経験したこともあるようなことでしょう。しかしこの絵本の秀逸なところは、エルフィーを庭に埋葬するシーンです。そこを抜粋します。

_____ぼくたちは、エルフィーを、にわにうめた。みんな、ないてかたを、だきあった。にいさんやいもうとも、エルフィーがすきだった。ぼくだって、かなしくてたまらなかったけど、いくらか、きもちがらくだった。だってまいばんエルフィーに、「ずーっと、だいすきだよ」っていってやってたからね______

人であれペットであれ、必ず別れがやってくるのが世の習い。そうなる前に、この「ぼく」のように、普段から全力で相手を思いやりそれを言葉で伝えてあげること、できたらいいなと思います。照れなんかもあり簡単ではないですけどね、、、。

5段階評価で5つ。涙なしでは読めません。


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2013年10月8日火曜日

トップ・オブ・ザ・レイク〜消えた少女〜 海外TVドラマ


ジェーン・カンピオン製作総指揮のTVドラマ「トップ・オブ・ザ・レイク〜消えた少女〜」がAXNミステリーで全7話が放送され、一気観しました。

ジェーン・カンピオン、といえば「ピアノレッスン」ですね。久しぶりに名前を聞きました。「ピアノレッスン」といえば「ホリー・ハンター」。その彼女も、虐待された女性たちのコミューンのリーダー「GJ」役として出演しております。キレイな銀髪は地毛でしょうか。ステキに歳を重ねられているようです。

物語の舞台は、美しい湖畔のあるニュージーランドの田舎町。12歳のトゥイ(ジャクリーン・ジョー)が湖で入水し自殺未遂をします。トゥイはこの街の大物、マット(ピーター・ミュラン)の子供で、妊娠していました。そこへこの街の出身者で、いまはシドニーに勤務している女性刑事のロビン(エリザベス・モス)が呼ばれ事件を担当することに。しかしトゥイは姿を消してしまう、、、。

閉鎖的な田舎町で起こる失踪事件。少女の妊娠、誰が父親なのか。主人公の過去の秘密、何かと怪しい上司、、、などなど、謎が謎を呼び、ちょっとツインピークスを思い起こさせるような展開です。あれみたいに意味不明な結末にはなりませんけど。

正直、つらい内容です。スッキリするような話ではありません。ですけど主人公ロビンのエリザベス・モスの可憐さで少し救われます(個人差ありますけど)。その恋人ジョノ役のトーマス・M・ライトもちょっと小汚くていい味出してます。そして「ロード・オブ・ザ・リング」ファンならば忘れてはならない、あのファラミアをやっていたデビッド・ウェナムが上司アル役で出演。しかしこの上司の笑顔は怪しすぎる。こんな上司いたら怖いですよ。

こういうTVシリーズって面白いですよね。映画だと描ききれない人物の内面を掘り下げられますし。でもGJは最後まで謎だったなー。

5段階評価3つ。ミステリー好きならば観て損はしないでしょう。一挙放送を見逃した方は、11月21日(木)20時に第1話が放送されます(AXNミステリー)。

2013年10月7日月曜日

64(ロクヨン) 横山秀夫著


警察小説の第一人者、横山秀夫さんの渾身作「64ロクヨン」。しばらく体調を崩されブランクがあり、7年ぶりの作品です。その思いが弾けたのか、ハードカバーで647ページもの大長編。

これは「陰の季節」「動悸」「顔 FACE」に続く、「D県警シリーズ」の一作。主人公は元刑事課で警務部秘書課広報官になった「三上善信」。「陰の季節」での主人公、警務課調査官「二渡真治」も脇に回り暗躍します。三上と二渡は同期で階級はどちらも警視。

題名の「64」とは昭和64年に起きた未解決の誘拐事件のこと。物語はその14年後が舞台です。その未解決事件に、三上の娘の失踪、警察庁長官の視察などが絡み合う。刑事部と警務部、キャリアとノンキャリア、上司と部下、警察とマスコミの確執。それぞれの立場でそれぞれの思いが交錯します。相変わらず心理描写が細かい。事件よりも人の心理、横山作品の特徴ですね。

短編が多い横山警察小説の中で異色の分量。人によっては、ただ冗長に感じるかもしれません。特に全体を把握できるまでの前半は、我慢を強いられる可能性があります。それが後半、謎が紐解かれていくにしたがい物語は急に加速。張り巡らされた伏線が綺麗に収束していくさまは見事です。

もう平成も25年経ったのですね。たった7日間しかなかった昭和最後の年、昭和64年も遠い昔、、、。

5段階評価で4つ。☆5つと言いたいところなんですが、ちょっと力が入りすぎちゃったかな、ってことでマイナス1。横山秀夫ファン以外が手を出すには、すこし勇気がいる本の厚さ。でも面白いから読んでみて下さい。


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2013年10月6日日曜日

ゴーストバスターズ


ケーブルテレビでやってたので、つい観てしまいました。前に観たのが何年前だったか全く思い出せないほど久しぶり。

これは当時大ヒットしましたね。あの年代に年頃だった人ならば、好き嫌いにかかわらず、胸の奥が疼くこと間違いなし。レイ・パーカー・ジュニアのテーマソングが懐かし〜。映画を観たことなくても「ゴーストバスターズ!」ってフレーズは耳にしたことがあるんじゃないですかね?NHK連ドラ「あまちゃん」の登場人物、北鉄の大吉サンがよくカラオケで歌ってました。

ビル・マーレーダン・エイクロイドハロルド・ライミスシガーニー・ウィーバーリック・モラニス。懐かしい面々です。当時の私はリック・モラニスが好きで、彼が画面に出てくるだけで顔がほころんでしまうのですよ。「ミクロキッズ」や「リトルショップ・オブ・ホラーズ」などにも出演していました。

ストーリーは単純明快。超常現象研究者の3人がゴーストを退治する会社を作り、ドタバタと仕事をこなしていき、最後に大ボスを退治する。それを面白おかしく見せてくれるわけです。こういう脳天気な映画はまさに80年代。世相が関係してるのか、いつからか小難しいものが多くなり、ただ楽しいだけの映画を見かける機会は減りました。

CGなんてないこの時代、それでも合成で頑張っています。近年ハリウッドのCGはホントよく出来てて綺麗ですけど、この頃のチープながら「熱」のある映像も負けてはいないな、って感じました。でもそれは単にノスタルジックな思いがあるからですかね?現代の若者が観たらどう思うのでしょう?気になります。

5段階評価で4つ。思い出補正付きで。


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2013年10月5日土曜日

愚か者ほど出世する ピーノ・アプリーレ


古本屋で偶然見つけた本。「愚か者ほど出世する」タイトルに惹かれました。作者のピーノ・アプリーレさんはイタリア人でジャーナリスト。他の著作は「ヘマな奴ほど名を残す」。おそらくこの2冊だけしか日本では出版されていないはず(現地イタリアでも他に出版物があるのか知りませんけどね)。

どうしてバカがこんなにたくさんいるのだろうか」そんな作者の疑問提示からこの本はスタート。動物行動学者ローレンツ教授との運命的な出会いがあり、その縁で彼の友人であるオーストリア人の哲学者と文通による議論を交わすことになります。

前書き後書きを除き全8章からなる本編は、章のはじめにその哲学者からの手紙がまず提示され、それに作者が反論をする、といった感じで進みます。基本的にこの二人は議論が噛み合いません。もともと根っこにある信念が違う二人。そのズレ方が面白い。

作者が提唱する「バカに関する9つの法則」というのがあります。
バカは生きのび、利口は滅びる」や「現代人はバカになるために生きている」だとか「人間は寄れば寄るほどバカになる」などなど、思わずウンウンと頷きたくなる痛快なフレーズ。私はこういうの好きです。

本編には関係ありませんが残念な点がひとつ。安易な「バカ」つながりからなのか、大ベストセラー「バカの壁」の著者、養老孟司さんが前書きをしています。養老さんの本は好きですけど、この前書きはいらないでしょう。まあ読み飛ばせばいいだけなんですけど。

5段階評価で3つ。ためになるかは別にして、面白いってことは間違いありません。


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2013年10月4日金曜日

渡る世間は「数字」だらけ 向井万起男著


著者の向井万起男さん、奥様は宇宙飛行士の向井千秋さんです。向井さんが宇宙へ行く前後、インパクトあるオカッパ頭の万起男さんの姿をよくテレビでお見かけしました。一度見たら忘れませんよね。

その宇宙飛行士の妻との関係を描いた「君について行こう」や「ハードボイルドに生きるのだ」など、何冊か著作があります。万起男さん、語り口が面白いのですよ。

その中でも私が一番好きなのはこの作品。万起男さんはとにかく「数字」好き。データ好きなのです。これが文庫になる前は「愛人の数と本妻の立場」という題で出版されていました。

この旧題の話は本書の一番初めに出てきます。「〜63対1の戦い」という副題付きで。どういう話かというと、惑星の衛星の数についてです。地球には衛星が月ひとつだけですが、木星には63個(2005年時点)もの衛星があるそうです。ウィキペディアによると2012年のデータでは66個に増えてますね。

こうやって私が結果だけ書くと面白みも何もありませんが、それを万起男さんは面白おかしく語るわけです。誰も注目しないようなデータに意味を持たせ、ユル~く語ってくれます。そのユルさが癖になります。

5段階評価で4つ。数字好き、データ好きな方はドンピシャですよ。