2014年2月3日月曜日

インフェルノ ダン・ブラウン著


待ちに待ったラングドンシリーズ第4弾「インフェルノ」。前作「ロスト・シンボル」では、ちょいとパワーダウンか?と感じていたので、本作での巻き返しを期待していました。

フィレンツェの病院で目覚めたハーバード大学宗教象徴学教授ラングドン。なぜいまここにいるのか戸惑う彼に医師シエナは、頭に銃弾を受けICUにいることを告げる。その直後暗殺者が現れ、シエナと二人辛くも脱出。追手から逃げながらダンテ「神曲(地獄篇)」に秘められた謎を解読していくのだが、、、。

うーん、、、。どうなんでしょうか、、、。全くつまらないか、と問われれば、そんなことはないと、、、いや、、、どうでしょう、、、。期待が大きかったからなのか、、。

フィレンツェ、ベネチアなどの名所観光ガイドブックのように感じてしまいました。まあそれは第1作の「天使と悪魔」からそういう傾向はありましたけど、ストーリーとのバランスは保っていたと思うのです。

ただ今作は肝心のストーリーが弱い。無理にラングドンシリーズにしないで、別の登場人物で上下巻に分けず1冊でまとめたらそれなりに面白くなったのでは、と残念な思いです。テーマは興味深いものを扱っていますから。

2015公開を目指し、映画化も進んでいるようですね。ストーリーが単純なぶん、映画にはちょうどいいでしょう。「ダ・ヴィンチ・コード」などは駆け足すぎて、映画だけでは物語を堪能できませんから。スピード感のある映像に仕上がったら、一級の娯楽映画になるはずです。ところで「ロスト・シンボル」の映画化は諦めたのでしょうか、、、。

5段階評価で2つ。ダン・ブラウンもここまでか。次作までは読みますけど。

インフェルノ (上) (海外文学) インフェルノ (下) (海外文学)
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村

2013年12月21日土曜日

モールス アメリカ/イギリス映画


2010年公開(日本公開は2011年)の「モールス」。二昔前の「モーリス」っていう耽美な映画を思い出し、人の名前か、なんて考えましたが、モールス信号のことでした。監督マット・リーヴス、主演はコディ・スミット=マクフィークロエ・グレース・モレッツ

1980年代のニューメキシコ州ロスアラモス。雪に閉ざされた田舎町に住む12歳の少年オーエンは、学校でいじめられ孤独な毎日を送っていた。そんなある日、隣にミステリアスな少女アビーが引っ越して来る。寒い中彼女はいつも裸足だった。アパートの中庭で出会い仲良くなった二人は、壁越しにモールス信号で会話するようになる。そのころ町では残酷な連続猟奇殺人事件が起きていた、、、。

ある日の夕方、私は何となくダルく少し眠かった。こういう時は静かな環境よりも、つまらない映画やスポーツを観たりするとよく眠れます。この日もそういう睡眠導入剤のような映画を求めケーブルテレビを探っていて、この映画に行き当たりました。

チャンネルの解説には「連続猟奇殺人と、幼いふたりのピュアな初恋の行方を描く。出演は「キック・アス」のクロエ・グレース・モレッツと「ザ・ロード」のコディ・スミット・マクフィー」なんて、つかみどころのないことが書いてあるのも気に入りました。

しかし映画が始まると眠気は吹き飛んでしまいました。わけもわからず冒頭シーンからひきこまれ「なんだこれは?」と動揺しているところへ、オーエン少年が登場。この少年の眼の動きがとてもいいのです。そして裸足の少女アビー。もうこの二人から目が離せなくなってしまいました。

このアビー役のクロエ・グレース・モレッツはリメイク版「キャリー」を演じているのですね。今後も注目の若手です。ナタリー・ポートマン以来の衝撃を受けました。

原作「MORSE -モールス-」は、2008年スウェーデンで先に映画化されています(邦題「ぼくのエリ 200歳の少女」)。今度スウェーデン版も観てみよう。

5段階評価で4つ。キャスティングの勝利ですね。偶然いいものを見つけました。


にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村

2013年12月18日水曜日

ソロモンの偽証 宮部みゆき著


宮部みゆき渾身の長編小説「ソロモンの偽証」。1冊700ページ超のハードカバー本で3冊という、手に取るのをちょっと躊躇ってしまいがちなボリュームですが、そこは安心の宮部さん、いつも通りスラスラと読ませてくれます。

1990年クリスマスの朝、城東第三中学校で雪に埋もれた死体が見つかった。遺体は同校2年の男子生徒。彼は一月ほど前から不登校を続けていた。発見状況から見て自殺として処理され、普段の日常へと回帰していくかと思われた新学期、匿名の告発状が届く。「彼は自殺じゃない。本当は殺されたのだ。ボクはそれを見ていた___」。やがてマスコミでも報道され、学校が生徒が家族が暗闇に飲み込まれてゆく、、、。

第1部「事件」ではその副題の通り、城東第三中学校のまわりで次々と事件が起こります。落ち着いたかと思うとまた事件。現実であったなら、生徒も先生もその家族も大変だろうと同情したくなる展開です。

そんな大事件もやはり月日が経つと風化するもの。関係者も意識、無意識の別はあるものの、事件の記憶は頭の片隅に追いやり日常生活を営むわけです。そうしないと生きづらいですからね。そう、物語の中でも自分が知り得た決着に納得出来ず、生きづらい人がいるのです。事件の真相を、あるいは深層を知りたいと願うことから行動を起こす生徒がいました。

その生徒「藤野涼子」さんは事件を検証するため、夏休みを利用した課外授業という形で裁判を開くことを決意します。そして事件を捜査、検証する様子を描くのが第2部「決意」。つづく第3部「法廷」ではまるごと法廷劇です。そこで誰もが薄々感づいている真実が明かされていくわけですが、、、。

第1部冒頭の一節「子供って何も知らない。だけど、子供はほんとは何でも知ってるんだ。知りすぎるくらい__フィリップ・K・ディック(まだ人間じゃない)」の言葉は真実を突いていると思います。そうなんですけど、弁護人「神原和彦」くんのようなスーパー中学生いるかなぁ、、。

学校のあり方、マスコミ報道のあり方、保護者のあり方。軽いミステリの仮面の下で、そういったものを問うた作品なのでしょう。丁寧に描くために、この長さが必要だとは思いますが、少し冗長かもな、、という印象は否めません。

5段階評価で3つ。安心の宮部さんですからね。面白いし、読むのには苦労しませんけど。


にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村