2013年9月30日月曜日

漢字と日本人 高島俊男著


著者の高島俊男さん。中国文学に明るく、日本語、漢字についての知識量にはいつも驚かされます。週刊文春で以前連載されていた「お言葉ですが...」が有名ですね。私は大ファンです。

本書「漢字と日本人」は言葉好き、漢字好きの人であれば必読書といっていいと思います。「漢音」と「呉音」ってことなど、この本で初めて知りました。

ちょっとその説明。
「漢音」は唐の時代の言(ことば)で、日本に伝わってきたのが平安時代のはじめ頃。
「呉音」は漢音以前、数百年前に伝わってきた言(ことば)。呉音の方が古いのです。

例を挙げると「若(ジャク)」「文(ブン)」「行(カウ)」「正(セイ)」と読むのが漢音、「若(ニャク)」「文(モン)」「行(ギャウ)」「正(シャウ)」が呉音なのだそうです。音読みにいくつも種類があったのはこういうわけだったのですね。

日本語には漢字が伝来する以前からヤマトコトバ(訓読みですね)があり、それと漢字を結びつけた昔の人の苦労はどれだけのものだったのか、、、。現代人には無理なんじゃないでしょうか。日本語が難しいのも納得です。

本書後半で高島さんはたびたび行われてきた国語改革について厳しい意見をお持ちです。たしかに新字体より旧字体のほうがカッコイイですもん。それに昔の文章を読もうにもスラスラ読めませんし(文語体、口語体の問題もあります)。古典を原文で読めなくなったのは、日本人の大いなる損失だと思います。

5段階評価で5つ。日本人の必読書かと思いますがいかがでしょうか。

2013年9月29日日曜日

時のみぞ知る/クリフトン年代記第1部 ジェフリー・アーチャー著


ジェフリー・アーチャーといえば真っ先に思い浮かぶのが80年代に発表された「ケインとアベル」でしょう。これは大傑作ですよね。続編の「ロスノフスキ家の娘」も外せません。

いやあアーチャーさん、さすがです。こういったある一族の生涯を描かせたら間違いないですね(こういう一生を描くスタイルを「サーガ」と呼ぶのですね)。まだ1部だけで今後どうなるかで作品の評価は変わってくるでしょうが、おそらく期待を裏切ることはないでしょう。

ハリー・クリフトンという少年(1部の終わりの時は青年)が主人公なんですけど、章ごとに語る人(視点)が変わります。そんなわけで時代が多少前後したり重なりあったりします。後になってあの事件の裏にはこんな事情があったのか、なんてわかってきて、また前を読み返したりしました。

とにかく先を知りたい、一気読みでした。またいいところで2部へ続く、となるのですよ。あーいつ出るのか、と思っていたら、先月その第2部が出ているではないですか!!

といってもまだ完結には程遠いようなんですよね、、、。アーチャーさん、かなり高齢になってきましたから、お身体に気をつけてもらって、未完で終わる事のないようにお願いします。

5段階評価で4つ。5つと言いたいところですが、完結するまで5つはおあずけということで。

2013年9月28日土曜日

自白 ジョン・グリシャム著


ジョン・グリシャムは「ザ・ファーム」や「ペリカン文書」など映画化された作品も多数あり、言わずと知れた大ベストセラー作家。このも「自白」期待して読みましたよ。

教会に現れた過去の強姦殺人を告白する元死刑囚。その事件の冤罪で死刑囚となった青年の、死刑執行まで残された日は4日しかない。見つかっていない死体。告白を聞いたがため巻き込まれる牧師、死刑執行停止のため奔走する弁護士、被害者の家族、冤罪の青年の家族、早く死刑を行い事件の幕を引きたい警察と検事。タイムリミットがある中、幾人もの思惑が交差して物語は加速する、、、、。

、、、かと思ってたんですけど、なんというか、それほど切羽詰まった感じが伝わってこないのです。ストーリー展開がとにかく遅い。部分的にみればよく描けてると思うのですよ。ただ早く先が読みたい、って気になかなかさせてくれませんでした。

図書館で借りて読んだのですけど、2週間の期限内で読み終わらず延長申請してしました。面白くないわけじゃないのに、先に進まない。なにか不思議な小説でした。小説というより、ノンフィクションのドキュメンタリーものを読んでるような、そんな気持ちにもなりました。面白いと思うのですけどね、この感じはなんなんでしょう?

5段階評価で2つ3つの間くらい。グリシャムファン以外はスルーでもいいんじゃないですかね。

2013年9月27日金曜日

しずかな日々 椰月美智子著


椰月美智子(やづき みちこ)さんの代表作「しずかな日々」。この一作品で第45回野間児童文芸賞と第23回坪田譲治文学賞、2つを同時に受賞しています。同じ作品が別の賞をとるなんてことがあるんですね。

主人公が子供時代を振り返り、人生のターニングポイントとなった小学5年生の時のお話。スティーブン・キング原作の映画スタンド・バイ・ミーを思い出しました。

子供時代の「僕」は内気な男の子。訳あって祖父と二人暮しを始める。時間が止まったようなおじいさんの家での、しずかな日々、、、。

少年から青年への過渡期。早い子はそろそろ声変わりが始まる頃でしょうか。親友との関係、親との関係、そしておじいさんとの関係。ちょっとした冒険もあったりして、抑えのきいたストーリー展開の中にも緩やかな起伏があります。

胸がジワーっとあたたかくなる中に、ちょっとキュンとするせつなさを内包する作品。誰にでもこれと似たようなストーリーが、胸の奥に刻まれていることでしょう。久しぶりに心のアルバムを開かされることとなりました。

「あなたの人生のターニングポイントはいつですか」。人生は劇的でないと主人公はいいます。劇的ではなくとも100人いたら100篇の物語があるのが人生。いいストーリーでも悪いストーリーでも、それが自分の人生だと受け入れるしかありません。

5段階評価で4つ。みんな昔は子供だった。子供から大人まで、すべての人にオススメです。

2013年9月26日木曜日

ザ・シークレット ロンダ・バーン著


ザ・シークレット」。数年前ブームでしたね。映画化もされたりして。私はその頃は全く存在に気づかず、ブームからだいぶ遅れて読みました。

いわゆる「引き寄せの法則」本。引き寄せ関連の本は他にも、エスター・ヒックス/ジェリー・ヒックス著「引き寄せの法則〜エイブラハムとの対話」ジョー・ヴィターレ著「宇宙スイッチ」、ウォレス・ワトルズ著「富を引き寄せる科学的法則」、マイケル・J・ロオジエ著「引き寄せの法則」などなど、多数あります。

書かれている内容はどれも大差なく「人生は自分の思うようになる。信じて願えば、物であれ環境であれ、望むものが手に入る」ってことです。基本これだけ。これをいろんな人の例を上げたりして、延々と語るわけです。

人の思念は宇宙と繋がっていて、その人の望むものをもたらすのだそうです。そんなみんながみんな自分勝手な望みをしたら、物やお金が世の中に溢れてしまいそうですけど、、、、それは充分な在庫があるので大丈夫だというのです。このあたりが私にはどうもうまく飲み込めませんでした。

これは究極のプラス思考なんですかね。私も本を読んで実践してみましたけど、なかなか引き寄せることはできませんでした。うまく引き寄せられないのは信じる心が足りないのだと、そういうことみたいです。信ずるものは救われる。ちょっと宗教チックですね。

ただ欲の皮を突っ張って毎日を怠惰に過ごすのでなければ、この「引き寄せの法則」の考え方も、悪くないかなと思います。諦めの気持ちでウジウジしてるよりは楽しいコト考えて生きたほうがいいですもんね。

5段階評価で3つ。成功へのカギは「ほどほどに期待して毎日を楽しく生きること」なんですかね。

2013年9月25日水曜日

ホビット 思いがけない冒険


ホビット 思いがけない冒険」。またまた3部作の第1作目。はじめは前後編の2作予定だったみたいですけど、商売っ気から3部作になったのですかね?

ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)」の大ファンであるので、またあの世界観に浸れるのか、と映画化を知り嬉しく思いました。ロード・オブ・ザ・リングからもう10年の月日が流れているのに気づき、愕然としております。

映画冒頭、ロード・オブ・ザ・リングの始まりの少し前が描かれていて、フロドも出てくるし、なんかもうそれだけでシアワセなのです。そして舞台は60年前に。若き日のビルボ登場。ビルボ役のマーティン・フリーマン最高ですね。ユーモアと芯の強さがあるビルボをうまく演じきっていました。「SHERLOCK/シャーロック」でのワトスン役も見事でしたし、いま注目の俳優さんです。

裂け谷で懐かしい面々とも会えたし(60年前の設定なのに、ちょい老けてるのは気にしない)、それになんといってもゴラムが掛け値なしに可愛い。表情の動きが素晴らしいです。CGなんですけどね。

今年冬に2作目、来年冬に3作目。ああ待ち遠しい、、。でも終わってほしくない気持ちも、、、。

5段階評価で5つ。ファンですから、評価は甘めになります。

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2013年9月24日火曜日

ダイ・ハード/ラスト・デイ


シリーズ5作目の「ダイ・ハード」。

これまでとはちょっと違うテイストを感じました。相変わらず派手なんですけどね。カーチェイスの場面なんか、よく撮影してるわ、って感じで。全部CGなんですかね?どなたかご存じないですか?

舞台はロシア。息子のジャックが問題を起こして裁判沙汰になり、そこに我らがマクレーンが乗り込むわけです。チェルノブイリ原子力発電所なんかも関係してきて、、、。

このシリーズの一番の売りは、ピンチ連続のジョン・マクレーンだと思うのです。傷だらけでギリギリ切り抜けていく姿が魅力的なのです。残念ながら今作はその魅力に乏しい、、、。ブルース・ウィリスも歳とりましたね、、、。立ち姿がお爺ちゃんのようで悲しくなりましたよ。

息子との再会から共闘へ、中途半端なお涙はいらないけれど、もう少し心の動きを出して欲しかった。ジョンのアクションが消化不良だっただけに。4作目で描かれた娘との関係はよかっただけにそれが残念です。今作にも娘さん出てきますよ。

でもおそらくこれが最後のダイ・ハードになるでしょう。バイオハザードなんかと同じで、ファンであれば見届けてあげる義務があると思います。ええ、義務ですよ。

5段階評価で2つ。ダイ・ハードじゃなかったら1つですけどね。


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2013年9月23日月曜日

ヘブン 川上未映子著


乳と卵」で第138回芥川賞を受賞した川上未映子さんの作品。

その受賞作を読んで、申し訳ないけどこの作者は私には合わないな、と思っておりました。ただこの作品は知人からの強い勧めがあり、勇気を持ってチャレンジした次第で、、。

斜視のせいでイジメを受けている主人公「僕」。そしてちょっと変わったクラスメイトの女子「コジマ」。クラスからはみ出し者の二人のかかわり合いを軸に物語が進みます。ミステリアスな「コジマ」の秘密がだんだん明らかになり、二人の関係はどう発展していくのか。気づけば物語に引きこまれていました。

全然期待してなかったし、読み始めるまで気が重かったのは事実。でもハッキリ言って面白い、と思います。ただ結末はどうなんでしょうか?ネタバレになるので書きませんが、私は大いに不満です。ガッカリ、ってのは言い過ぎにしても、なんかもったいないな、っていう読後感。

イジメの問題に向き合ったチャレンジ精神も悪くないのですけど、そこもまた消化不良の一因になってます。イジメの根本の捉え方が、私とは少し違うな、と感じました。もちろんどちらが正しいなんてことは言えません。

5段階評価で3つ。最後の数ページ前までは☆4つだったのですけど、、。

2013年9月22日日曜日

映画バイオハザードV リトリビューション


ゲーム「バイオハザード」のファンだった私は、このハリウッド映画シリーズもなんとなく毎回観てしまいます。しかしよくここまで続きましたね(Ⅵもあるそうです)。

今回はオールスター総出演という感じですか。でも内容の薄さは隠しようがありません。なんかもう戦闘シーンは笑ってしまいます。それでもハリウッドですから、ちゃんと楽しませてくれますけどね。私は好きですよ、バイオシリーズ。

主演のミラ・ジョボビッチさん、バイオハザードシリーズに出演する以前は(「フィフス・エレメント」なんかもありましたが)、私の中ではちょっとB級感漂う(失礼)女優さんといった感じでした。バイオ第1作では冒頭のシャワーシーンで、別に脱ぐ必要ないのに裸体も披露されてますしね。映画自体もB級映画スレスレテイストですし、、、。

バイオ以降は年1〜2本のペースで映画に出演、いまや大女優の雰囲気があります。それでもバイオに出続けるのはご立派。代表作になってしまったからやめるにやめられず仕方ないのかな?俳優にとって代表作に恵まれることは幸運なのでしょうが、あまりにハマりすぎると他ができなくなり、逆に重荷になったりして、、、。

5段階評価で2つ。このシリーズのファンであれば、最後まで見届けてあげましょう。


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2013年9月21日土曜日

デセプション・ポイント ダン・ブラウン著


ダ・ヴィンチ・コード」で名が売れたダン・ブラウンさんが、そのひとつ前に書いていた作品。「天使と悪魔」「ダ・ヴィンチ・コード」のラングドンシリーズに挟まれた、彼の3作目にあたります。でも日本での発表は「ダ・ヴィンチ・コード」の後なんですよね。

私は「ダ・ヴィンチ・コード」、「天使と悪魔」、「ロスト・シンボル」「パズル・パレス」ときて最後にこれ。過度な期待はせず、ダン・ブラウン作品を全部読もう、そういう義務感だけでこの作品を手に取りました。

ストーリーはオモシロイです。途中までは、、、。これは「パズル・パレス」でもそうだったんですけど、上巻はオモシロイのです。下巻でだんだんナゾが解けてきて、なんかそうなると、登場人物の魅力が薄れてくるんですよね。これはダン・ブラウンさん作品全般に言えることかもしれません(私の勝手な感想です)。

大袈裟なアクションシーンも、やや食傷気味になりました。

私は翻訳物をニガテとしているのですが、越前敏弥さんの訳はとても読みやすくて好きです。凝った作者のウンチクも丁寧な訳で分りやすい。ダン・ブラウンさんは越前さんの訳がついてよかったですね。訳がダメだったら、原文でどんなにいい作品でも厳しいですもの。

5段階評価で3つ。無難にオモシロイ。読後、損した気分にはなりませんよ。

2013年9月19日木曜日

親鸞 (五木寛之著)


五木寛之さんの「親鸞」。これにはやられました。素晴らしい作品ですねぇ。

学生時代のトラウマか、仏教(に限らず宗教関連)ものは、これまで避けてきました。日本史の授業は大好きだったのに、鎌倉仏教で躓いたのです。どうやっても覚えられなかったんですよ、法然とか日蓮とか、、臨済宗とか曹洞宗とか、、、。

そんな私なもので、自発的には「親鸞」など手に取ることはなかったでしょう。しかし知人の強いプッシュと偶然の巡り合わせから読むことになりました。

読み始めたら、面白いこと面白いこと。寝るのも惜しんで一気読みでした。

魅力的な登場人物に支えられた主人公(親鸞)の成長、活劇調のシーン、ちょっとセクシーなラブストーリー。上下巻まったくスキがありません。一級品のエンターテイメント作品です。

ただ「親鸞伝記」と呼ぶにはちょっと違うかなと思います(詳しくないのでわかりませんが)。浄土真宗を研究しているような正統派の方々は、ちょっと首を傾げる箇所が多々あることでしょう。ただ全く無知な私のようなものにとっては、浄土宗、浄土真宗を学ぶ取っ掛かりとして最高の手引書だと思えます。

そして特筆すべきはルビの振りかた。とにかく親切なんです。多くの本でも難読漢字にはルビが振られていますが、それはほとんど初出の場合だけ(100ページくらい後にまた振られることもありますが)。しかしこの作品はページが変わるたび、また同じルビが振り直されているのです。読み方を知るために何ページも前を彷徨うことなく読めるのは有り難いのひとこと。

5段階評価で文句ナシ、5つ。仏教が嫌いでも一読をオススメします。