2013年10月29日火曜日

メン・イン・ブラック3 MIB3


ウィル・スミストミー・リー・ジョーンズ主演の「メン・イン・ブラック」シリーズ。シリーズといっても「」で終わったのかと思ってましたよ。10年の沈黙を経て、待望?の「」が2012年に公開されました。

正直、いまさらMIBでもないだろ、と思っていました。大体トミー・リー・ジョーンズはもう60後半でしょ、アクションできるんですか?と思っていました。なるほど、定番とはいえ、いい設定を思いつきましたね。

かつてエージェントK(トミー・リー・ジョーンズ)が月面の牢獄に送った「ボグロダイト星人・ボリスジェマイン・クレメント)」が脱走し、若き日のKを抹殺するため、タイムマシンを使い過去へと向かう。そして存在自体が消えてしまうK。ただひとりKが消えたことに気づいたエージェントJ(ウィル・スミス)は、Kを助けるため過去へ、、、。

主に舞台は過去(1969年)なわけです。若き日のK役ジョシュ・ブローリンが渋いですよ。アポロ11号(人類初の月面着陸のやつですね)発射の日がクライマックス。JとKとの意外なつながりもあり、ラストはMIBシリーズなのに少し胸が熱くなったりして、、、(失礼)。ネタバレはつまらないので、詳細は控えます。

5段階評価でつ。苦し紛れの続編攻撃かと思いきや、いやいや、よくまとまっていて飽きさせません。ハリウッドは未だ死なず。


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2013年10月22日火曜日

死もまた我等なり/クリフトン年代記第2部 ジェフリー・アーチャー著



クリフトン年代記、待望の第2部です。

第1部終わりで「やったーアメリカに着いたー」と思った矢先、警察に拘束されてしまったハリー。その急展開に続き、今作はさらなるジェットコースターに乗ります。

ハリーは別人「トム・ブラッドショー」として裁判所に出廷、6年の実刑判決を受け投獄される。嫌な看守、親切な囚人仲間。その裏で婚約者エマはハリーの生存を信じ、単身ニューヨークへ乗り込む。エマの兄で親友のジャイルズは軍隊へ。母メイジーの躍進、本当の父かもしれないヒューゴーの暗躍。アメリカはヨーロッパ戦線への参戦を決め、そしてハリーの行方は、、、。

なんでしょう、とても面白いのですよ。アーチャーさんですから。当然の一気読み、なんですが、、、。

第2部に入り、ストーリーはお伽話度がさらに強まってまいりました。ハリー、エマ、ジャイルズ、メイジーの主要キャラクターはかなり強い女神さまに守られていると思われます。羨ましいぐらいに。第1部でもそういったご都合主義は随所に顔を出してました。それでもそれを納得させるだけの深みというか、奥行きが感じられたのですが、今作は「え、そうなの、そんな簡単にうまくいっちゃうの?」てな具合に、あまりに安直なのです。

そんな展開の中で光るのは、本書唯一の悪役とも言えるヒューゴー。とってもイヤな奴なんですけど、一番人間味のある血の通った人物となっているのが皮肉です。お伽話の中に出てくるただひとつの現実。彼の章を読むのも辛かったほど嫌っていたのに、180度転換して愛着あるキャラクターに変わってしまいました。彼にはとことんヒール役を演じて欲しかったのですが、、、。

第1部を読み終えた時「ケインとアベル」以上の傑作か、と期待に胸を膨らませたあの夜。いまはちょっとトーンダウンしております。イギリス本国ではすでに第3部まで出版されてるそうですが、何部で完結するのでしょうか。エマって「ロスノフスキ家の娘」のフロレンティナとかなり似てますよね?性格とか行動とか。

5段階評価で3つ。またもやいいところで話が終わります。この先、期待してもいいのですよね?


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2013年10月19日土曜日

ひまわり イタリア映画


ソフィア・ローレンマルチェロ・マストロヤンニ主演、1970年公開のイタリア映画「ひまわり」。監督はヴィットリオ・デ・シーカ、音楽はヘンリー・マンシーニ。おふたりとも巨匠と呼ぶに相応しいお方。監督は他に「自転車泥棒」「終着駅」「昨日・今日・明日」などで知られています。音楽のヘンリー・マンシーニはさらに有名ですね。「ティファニーで朝食を」「酒とバラの日々」「ピンクパンサー」などなど。

第2次大戦中、海辺で出会ったジョバンナと兵士アントニオはすぐに結婚。結婚した兵士に与えられる12日間の休暇を過ごします。楽しく情熱的な日々はあっという間に終わり、アントニオは寒さ厳しいロシア戦線へ。

アントニオの安否もわからぬまま数年が経ち、やがて終戦。彼の写真を手に、引き上げ列車の着く駅のホームをさまようジョバンナ。しかし彼の姿は見当たらず、、、。彼の生存を信じ、諦めきれない彼女は少ない情報を手掛かりにソ連へ向かいます。途中列車から見える一面のひまわり畑。

あちこちさまよった末、ようやく彼の居場所に辿り着きます。しかしそこに居たのは若いロシア人女性と小さな子供。その女性は雪の中で倒れている瀕死のアントニオを助けてくれた人でした。そして駅のホームでついにアントニオとジョバンナは再会。ホームの端と端とで見つめ合うふたり。そこでジョバンナがとった行動は、、、、。

反戦と切ないラブストーリー。結ばれる運命のふたりを容赦なく引き裂く戦争。勝っても負けても武器商人以外は仕合わせになれないのが戦争。それでもなぜ人は戦うのでしょうか。日本の漫画/アニメ「はいからさんが通る」もこんな感じの設定がありましたね。あれは日露戦争でしたか。紅緒と少尉、懐かしい、、。

この映画はなんといってもソフィア・ローレンですよ。冒頭の華やかなジョバンナとその後のジョバンナ。演技の使い分けが見事です。疲れた未亡人風でも、美しさは微塵も損なわれていないのがまた凄い。彼女のような圧倒的な女優というのは、今後もう出てこないのではないでしょうか。

私の好きなシーン。ロシアへの出征前、トイレで抱きあうふたりを映す薄汚れた鏡。その鏡に一筋の亀裂が入っているのです。その後のふたりを暗示してるような、気の利いた演出だなぁと思いました。神は細部に宿るのです。

ラストシーンのジョバンナの表情、そしてエンドロールの一面のひまわり畑。満開に揺らめくひまわりが、もの悲しい、、。ヘンリー・マンシーニのテーマソングがさらに感情を揺さぶります。

この映画のせいで、満開のひまわり畑を見ると胸が詰まってしまうようになりました。

5段階評価で5つ。これぞ不朽の名作というやつでしょう。ソフィア・ローレンの美しさが、ただただ光り輝きます。


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2013年10月16日水曜日

まちがい言葉 おかしい言葉 宇野信夫著


宇野信夫著「まちがい言葉 おかしい言葉

宇野さんがすでに故人で、お亡くなりになったのはいまから20年以上も前のこと。私が宇野さんを知ったキッカケは山本夏彦さんの本です。どの本でどのように書かれていたのか思い出せませんが、宇野さんのことを絶賛しておりました。

宇野さんは戯作家。歌舞伎を書いたりするかたわら、エッセイも多数残しています。この本もそのひとつ。気の利いた言葉を紹介するとともに、巷の言葉の誤用を嘆いておられます。

『ら』抜けと『も』抜け」という話。以下抜粋。

___この頃もっとも耳ざわりなのは『ぴったり』ということを『ぴったし』という。『ぴったし』は日本語ではあるまい。それから『ら』を抜かす。例えば『見られる』を『見れる』___。テレビで『まだまだ食べれるぞ』と唄っている。これが全国に広まると『食べられる』がかえって間違いになってしまうような気がする___」。

この本が発行されたのは昭和63(1988)年。2013年現在、まだ「られる」が間違いとは言われてませんが、宇野さんの心配したとおり「れる」の侵食率はかなり高くなっています。そのうち「られる」は敬語だけにしか用いなくなるかもしれませんね。

あれは5年くらい前だったか、映画館のロビーでの出来事。隣に母子が座っておりました。しばらくして、子供がトイレに行くと駆け出し、母親がその背中を追いかけるように「〇〇、ひとりで行けれる!?」と大声で呼びかけました。私は思わず「えっ??」と声が出るほど驚きましたね。「」抜きだけじゃなく飽き足らず、必要のない「」を入れてしまうのかと。何事も「れる」と使わないと気がすまないのでしょうか。

5段階評価で4つ。血の通った日本語がいくつも登場します。


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2013年10月13日日曜日

「夏彦の写真コラム」傑作選① 山本夏彦著 藤原正彦選


コラムを書かせたら右に出るものはいない「山本夏彦」。2002年87歳で鬼籍に入るまでコラムを書き続けました。

夏彦翁はよく「辛口コラム」と評されます。確かにそういう面もありますが、何事にもただ文句をいい、怒りをぶちまけているだけの「コメンテーター」の類ではありません。彼らのように、自分のことを棚に上げ偉そうに振る舞う、そういった嫌味なところがないのですよ。常々ご自身のことを「ダメの人」と言ってたくらいですからね。

この本の中で私の好きなコラムをひとつ、抜粋で紹介します。タイトルは「汚職で国は滅びない」。

リベートや賄賂というと、新聞はとんでもない悪事のように書くが___、リベートは商取引にはつきもので悪事ではない。それを貰う席にいないものは悪く言うが、それは嫉妬であって正義ではない

我々貧乏人はみな正義で、金持ちと権力ある者はみな正義でないという論調は、金持ちでもなく権力もない読者を常に喜ばす。ただで喜ばすことができるから、新聞は昔から喜ばして今に至っている。これを迎合という

戦前の新聞は政財界を最下等の人間の集団だと書くこと今日のようだった。それをうのみにして若者たちは政財界人たちを殺したのである。汚職や疑獄による損失は、その反動として生じた青年将校の革新運動によるそれと比べればものの数ではない。___青年将校たちの正義はのちにわが国を滅ぼした。汚職は国を滅ぼさないが、正義は国を滅ぼすのである

今も新聞は政治家を人間のくずだと罵るが、我々は我々以上の国会も議員も持てない。政治家の低劣と腐敗は、我々の低劣と腐敗の反映だから___

夏彦翁は世の中に漠然と漂う多数の声、常識に真っ向から切り込みます。それにしてもマスコミの情報操作というのはオソロシイですね。意識してのことなのか無意識なのかはわかりませんが、、。

このコラムが書かれたのは昭和55年(1980年)ですけど、今の世も何も変わってませんよね。

5段階評価で5つ。何年経っても色褪せないコラムです。


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2013年10月10日木曜日

車谷長吉の人生相談〜人生の救い〜 車谷長吉著


以前ご紹介した「赤目四十八瀧心中未遂」の中でも触れました、車谷長吉さんの人生相談本「人生の救い」です。朝日新聞の土曜別冊beの人生相談コーナー「悩みのるつぼ」で掲載されていたもののまとめ本。これ日曜日だと記憶してましたが土曜日でした。

何人かの回答者がいる中で、車谷さんの回答は毎回鮮烈でした(車谷さんは月に1回の登場だったかと)。

運、不運で人生が決まるの?」相談者は、就職難に直面し生まれた年の不運を嘆く22歳の大学4年生。

それに対する回答は「世の中に運、不運はつきもの。不運を嘆くのは虫のいい考え、甘い、覚悟がない」と畳み掛け「この世の苦しみを知ったところから真の人生が始まる」とつづきます。さらに「真の人生を知らずに人生を終えてしまう人は醜い人。己の不運を知ったものだけが、美しく生きている」と結論づけます。

この手の相談の回答として「幸運と不運は表裏一体。禍福は糾える縄の如しという言葉もあるでしょう。 まじめに生きていればきっといいことがありますよ」なんてものを期待する人も多いのではないでしょうか。

対して車谷さんの回答は、一瞬救いのない回答に思えます。しかし心に迫ってくるのはどちらでしょうか。車谷さんはキレイ事ではない世の中の真理をついています。みんなの胸の奥にある、あまり触れてほしくない部分を、ナイフで抉るような言葉の数々。

車谷さんの言葉が心に響かない人は、きっとこれまで幸運な日々を過ごしてきたのでしょう。そういう人は読まなくていいと思います。

人生になんとなく行き詰まりを感じている人、これまで耳にした人生相談が「ちょっと違うよなぁ」なんて感じている人は、一度本書を読んでみてください。スッと飲み下せるかもしれません。まあそれは幸運な人ではない証になってしまいますが、、、。

5段階評価で4つ。前半は満点ですけど、後半なぜか踏み込みが甘いと感じるので。


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2013年10月9日水曜日

ずーっと ずっと だいすきだよ ハンス・ウィルヘルム絵と文

ずーっと ずっと だいすきだよ 」ハンス・ウィルヘルムさんの絵本。彼の作品は他に「そんなのずるいよ!タイローン 」「タイローンなんかこわくない 」「ぼくたち また なかよしさ! 」などがあります。

表紙から想像できるように、内容は主人公「ぼく」と犬の「エルフィー」とのお話。

「ぼく」と「エルフィー」は一緒に大きくなりました。幼児だった「ぼく」と子犬の「エルフィー」。ただ人間と犬では成長のスピードが違い、エルフィーのほうが早く大きくなります。

一緒に遊び、いたずらをし、そんな楽しい月日はどんどん過ぎ、いつしか「ぼく」はエルフィーより大きくなる。エルフィーは年を取って太り、散歩を嫌がるようになりました。そして元気がなくなってきたエルフィーを獣医さんへ連れて行きました。ある朝「ぼく」が目覚めるとエルフィーは、、、。

ここまでのストーリーは、よく聞く話でもあり、また多くの人が実際に経験したこともあるようなことでしょう。しかしこの絵本の秀逸なところは、エルフィーを庭に埋葬するシーンです。そこを抜粋します。

_____ぼくたちは、エルフィーを、にわにうめた。みんな、ないてかたを、だきあった。にいさんやいもうとも、エルフィーがすきだった。ぼくだって、かなしくてたまらなかったけど、いくらか、きもちがらくだった。だってまいばんエルフィーに、「ずーっと、だいすきだよ」っていってやってたからね______

人であれペットであれ、必ず別れがやってくるのが世の習い。そうなる前に、この「ぼく」のように、普段から全力で相手を思いやりそれを言葉で伝えてあげること、できたらいいなと思います。照れなんかもあり簡単ではないですけどね、、、。

5段階評価で5つ。涙なしでは読めません。


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2013年10月8日火曜日

トップ・オブ・ザ・レイク〜消えた少女〜 海外TVドラマ


ジェーン・カンピオン製作総指揮のTVドラマ「トップ・オブ・ザ・レイク〜消えた少女〜」がAXNミステリーで全7話が放送され、一気観しました。

ジェーン・カンピオン、といえば「ピアノレッスン」ですね。久しぶりに名前を聞きました。「ピアノレッスン」といえば「ホリー・ハンター」。その彼女も、虐待された女性たちのコミューンのリーダー「GJ」役として出演しております。キレイな銀髪は地毛でしょうか。ステキに歳を重ねられているようです。

物語の舞台は、美しい湖畔のあるニュージーランドの田舎町。12歳のトゥイ(ジャクリーン・ジョー)が湖で入水し自殺未遂をします。トゥイはこの街の大物、マット(ピーター・ミュラン)の子供で、妊娠していました。そこへこの街の出身者で、いまはシドニーに勤務している女性刑事のロビン(エリザベス・モス)が呼ばれ事件を担当することに。しかしトゥイは姿を消してしまう、、、。

閉鎖的な田舎町で起こる失踪事件。少女の妊娠、誰が父親なのか。主人公の過去の秘密、何かと怪しい上司、、、などなど、謎が謎を呼び、ちょっとツインピークスを思い起こさせるような展開です。あれみたいに意味不明な結末にはなりませんけど。

正直、つらい内容です。スッキリするような話ではありません。ですけど主人公ロビンのエリザベス・モスの可憐さで少し救われます(個人差ありますけど)。その恋人ジョノ役のトーマス・M・ライトもちょっと小汚くていい味出してます。そして「ロード・オブ・ザ・リング」ファンならば忘れてはならない、あのファラミアをやっていたデビッド・ウェナムが上司アル役で出演。しかしこの上司の笑顔は怪しすぎる。こんな上司いたら怖いですよ。

こういうTVシリーズって面白いですよね。映画だと描ききれない人物の内面を掘り下げられますし。でもGJは最後まで謎だったなー。

5段階評価3つ。ミステリー好きならば観て損はしないでしょう。一挙放送を見逃した方は、11月21日(木)20時に第1話が放送されます(AXNミステリー)。

2013年10月7日月曜日

64(ロクヨン) 横山秀夫著


警察小説の第一人者、横山秀夫さんの渾身作「64ロクヨン」。しばらく体調を崩されブランクがあり、7年ぶりの作品です。その思いが弾けたのか、ハードカバーで647ページもの大長編。

これは「陰の季節」「動悸」「顔 FACE」に続く、「D県警シリーズ」の一作。主人公は元刑事課で警務部秘書課広報官になった「三上善信」。「陰の季節」での主人公、警務課調査官「二渡真治」も脇に回り暗躍します。三上と二渡は同期で階級はどちらも警視。

題名の「64」とは昭和64年に起きた未解決の誘拐事件のこと。物語はその14年後が舞台です。その未解決事件に、三上の娘の失踪、警察庁長官の視察などが絡み合う。刑事部と警務部、キャリアとノンキャリア、上司と部下、警察とマスコミの確執。それぞれの立場でそれぞれの思いが交錯します。相変わらず心理描写が細かい。事件よりも人の心理、横山作品の特徴ですね。

短編が多い横山警察小説の中で異色の分量。人によっては、ただ冗長に感じるかもしれません。特に全体を把握できるまでの前半は、我慢を強いられる可能性があります。それが後半、謎が紐解かれていくにしたがい物語は急に加速。張り巡らされた伏線が綺麗に収束していくさまは見事です。

もう平成も25年経ったのですね。たった7日間しかなかった昭和最後の年、昭和64年も遠い昔、、、。

5段階評価で4つ。☆5つと言いたいところなんですが、ちょっと力が入りすぎちゃったかな、ってことでマイナス1。横山秀夫ファン以外が手を出すには、すこし勇気がいる本の厚さ。でも面白いから読んでみて下さい。


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2013年10月6日日曜日

ゴーストバスターズ


ケーブルテレビでやってたので、つい観てしまいました。前に観たのが何年前だったか全く思い出せないほど久しぶり。

これは当時大ヒットしましたね。あの年代に年頃だった人ならば、好き嫌いにかかわらず、胸の奥が疼くこと間違いなし。レイ・パーカー・ジュニアのテーマソングが懐かし〜。映画を観たことなくても「ゴーストバスターズ!」ってフレーズは耳にしたことがあるんじゃないですかね?NHK連ドラ「あまちゃん」の登場人物、北鉄の大吉サンがよくカラオケで歌ってました。

ビル・マーレーダン・エイクロイドハロルド・ライミスシガーニー・ウィーバーリック・モラニス。懐かしい面々です。当時の私はリック・モラニスが好きで、彼が画面に出てくるだけで顔がほころんでしまうのですよ。「ミクロキッズ」や「リトルショップ・オブ・ホラーズ」などにも出演していました。

ストーリーは単純明快。超常現象研究者の3人がゴーストを退治する会社を作り、ドタバタと仕事をこなしていき、最後に大ボスを退治する。それを面白おかしく見せてくれるわけです。こういう脳天気な映画はまさに80年代。世相が関係してるのか、いつからか小難しいものが多くなり、ただ楽しいだけの映画を見かける機会は減りました。

CGなんてないこの時代、それでも合成で頑張っています。近年ハリウッドのCGはホントよく出来てて綺麗ですけど、この頃のチープながら「熱」のある映像も負けてはいないな、って感じました。でもそれは単にノスタルジックな思いがあるからですかね?現代の若者が観たらどう思うのでしょう?気になります。

5段階評価で4つ。思い出補正付きで。


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2013年10月5日土曜日

愚か者ほど出世する ピーノ・アプリーレ


古本屋で偶然見つけた本。「愚か者ほど出世する」タイトルに惹かれました。作者のピーノ・アプリーレさんはイタリア人でジャーナリスト。他の著作は「ヘマな奴ほど名を残す」。おそらくこの2冊だけしか日本では出版されていないはず(現地イタリアでも他に出版物があるのか知りませんけどね)。

どうしてバカがこんなにたくさんいるのだろうか」そんな作者の疑問提示からこの本はスタート。動物行動学者ローレンツ教授との運命的な出会いがあり、その縁で彼の友人であるオーストリア人の哲学者と文通による議論を交わすことになります。

前書き後書きを除き全8章からなる本編は、章のはじめにその哲学者からの手紙がまず提示され、それに作者が反論をする、といった感じで進みます。基本的にこの二人は議論が噛み合いません。もともと根っこにある信念が違う二人。そのズレ方が面白い。

作者が提唱する「バカに関する9つの法則」というのがあります。
バカは生きのび、利口は滅びる」や「現代人はバカになるために生きている」だとか「人間は寄れば寄るほどバカになる」などなど、思わずウンウンと頷きたくなる痛快なフレーズ。私はこういうの好きです。

本編には関係ありませんが残念な点がひとつ。安易な「バカ」つながりからなのか、大ベストセラー「バカの壁」の著者、養老孟司さんが前書きをしています。養老さんの本は好きですけど、この前書きはいらないでしょう。まあ読み飛ばせばいいだけなんですけど。

5段階評価で3つ。ためになるかは別にして、面白いってことは間違いありません。


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2013年10月4日金曜日

渡る世間は「数字」だらけ 向井万起男著


著者の向井万起男さん、奥様は宇宙飛行士の向井千秋さんです。向井さんが宇宙へ行く前後、インパクトあるオカッパ頭の万起男さんの姿をよくテレビでお見かけしました。一度見たら忘れませんよね。

その宇宙飛行士の妻との関係を描いた「君について行こう」や「ハードボイルドに生きるのだ」など、何冊か著作があります。万起男さん、語り口が面白いのですよ。

その中でも私が一番好きなのはこの作品。万起男さんはとにかく「数字」好き。データ好きなのです。これが文庫になる前は「愛人の数と本妻の立場」という題で出版されていました。

この旧題の話は本書の一番初めに出てきます。「〜63対1の戦い」という副題付きで。どういう話かというと、惑星の衛星の数についてです。地球には衛星が月ひとつだけですが、木星には63個(2005年時点)もの衛星があるそうです。ウィキペディアによると2012年のデータでは66個に増えてますね。

こうやって私が結果だけ書くと面白みも何もありませんが、それを万起男さんは面白おかしく語るわけです。誰も注目しないようなデータに意味を持たせ、ユル~く語ってくれます。そのユルさが癖になります。

5段階評価で4つ。数字好き、データ好きな方はドンピシャですよ。


2013年10月3日木曜日

東京奇譚集 村上春樹著


村上春樹東京奇譚集」。
フィクションとノンフィクションの隙間にあるような5つの物語。

村上春樹さんをご存じない方はいないでしょう。「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」「ノルウェイの森」「1Q84」そして最近作は「色彩を持たない多崎つくると巡礼の年」。まさにベストセラー目白押し。近いうちノーベル文学賞も取るのではないかと思われる大作家です。

そんな村上さん、熱烈なファンも多い反面、全く受け付けない人もまた少なくないかと思われます。私もどちらかというとニガテにしておりました。あの比喩だらけのクドい言い回しが好きになれなかったんですよ。登場人物のセリフの端々にはスノッブさが多々感じられますし。

その思いを変えたのがこの作品。なんでかわからないけれど手にとってしまいました。5篇あるうちの最初にある「偶然の旅人」。私はこれが一番好きです(この本の中だけでなく、私が読んだ村上さんの全作品の中で)。

相変わらずオシャレな会話をする主人公と彼女ですが、それほど嫌味には感じず、スッと物語に入り込めました。それに文章がクドくない。「1Q84」あたりは私にとってガマン大会のようなものでしたけど、これはサラッと読めるのです。短編てこともあるんでしょうが。

5段階評価で4つ。村上春樹はニガテだ、という方にぜひ読んでみてもらいたい作品です。

2013年10月2日水曜日

オブリビオン


トム・クルーズ主演のハリウッドSFもの「オブリビオン」。カタカナがニガテな私には一度で覚えられないタイトルです。昔だったら気の利いた邦題が付けられていたことでしょう。近年は原題をそのままカタカナにしたものが多いですね。配給会社の怠慢なのでは?

20世紀のSFは時代設定も世紀末だったり21世紀初頭だったりして、いまの2013年なんてまさに近未来、SFの世界でした。夢の21世紀には程遠いわけですが、それがまた現実なわけで。

舞台は西暦2077年。その60年前に起きた異星人との戦争の末、辛くも人類は勝利するも、地球は壊滅的な被害を受けてしまいました。その荒廃した地球で戦後処理を続ける主人公ジャック(トム・クルーズ)。ある日のパトロール中、墜落した宇宙船から謎の女性(ジュリア)を救出したところから、物語は大きく動き出す、、。

このジュリア役のオルガ・キュリレンコさん、魅力的です。昔のフランス映画に出てくる女優さんのような目の輝きがあります。彼女はもともとモデルさんで、2005年に「薬指の標本」という作品で映画デビュー。2007年には007シリーズ「慰めの報酬」でボンドガールに選ばれました。

こういうSFはハリウッドの独壇場。2時間ダレることもなく楽しませていただきました。50歳を越えてもトム・クルーズはまだまだ元気。いい感じで歳を重ねてますよね。出演作品にも恵まれているように思えます。

ラストは良くも悪くもハリウッド。こうやって安心して観てられるのがハリウッド映画のいいところ。無理に頭を使わなくて済みます。殆どCGの世界なんでしょうけど、廃墟になった地球の映像が綺麗です。それにしても2017年に異星人との戦争が起こるのでしょうか?勝ち目ないですよね。

5段階評価で4つ。SF好きな人ならば間違いなく楽しめます。


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2013年10月1日火曜日

赤目四十八瀧心中未遂 車谷長吉著


赤目四十八瀧心中未遂」平成10年に直木賞を受賞した車谷長吉さんの代表作。

私が車谷長吉さんを知ったのは朝日新聞の日曜版で「悩みのるつぼ」という読者からの人生相談?、それの回答者として見かけたことが始まりでした。数年前に新聞をやめたので、まだ連載されているのかわかりませんが。

このコーナーは車谷さんだけでなく、週によって他にも何人かの回答者がいたと思います(車谷さんは月に一回くらいでしたかね)。他の担当者の回答は、無難というか、まあ普通な感じなんです。でも車谷さんは毎回本気(他の方がいい加減というわけではありませんが)。生命をかけているような切迫感が伝わってくるのです。

「愛猫を轢き殺した近所の人への恨みが治まらない」という相談に、「あなたが終生その人を許せないとしたらそれでいい。ですが、もし恨んで恨んで恨み殺せば、その人は地獄に行きますが、あなたも地獄へ行くでしょう。人を恨むのは蜜の味、、、」。なんて回答なんです。

この小説も読んでいて痛いです。アパートの一室でモツを串に刺し続ける主人公。その向かいの部屋に住む妖艶な女。ある日「一緒に逃げて」と女に頼まれ駆け落ちをする、、、。油断していると切り倒されてしまいそうな、踏み込みの鋭さがあるのです。こちらの覚悟が試されるような作品だと思いました。

5段階評価で3つ。軽い気持ちで車谷長吉さんの小説は読めません。