2013年10月1日火曜日

赤目四十八瀧心中未遂 車谷長吉著


赤目四十八瀧心中未遂」平成10年に直木賞を受賞した車谷長吉さんの代表作。

私が車谷長吉さんを知ったのは朝日新聞の日曜版で「悩みのるつぼ」という読者からの人生相談?、それの回答者として見かけたことが始まりでした。数年前に新聞をやめたので、まだ連載されているのかわかりませんが。

このコーナーは車谷さんだけでなく、週によって他にも何人かの回答者がいたと思います(車谷さんは月に一回くらいでしたかね)。他の担当者の回答は、無難というか、まあ普通な感じなんです。でも車谷さんは毎回本気(他の方がいい加減というわけではありませんが)。生命をかけているような切迫感が伝わってくるのです。

「愛猫を轢き殺した近所の人への恨みが治まらない」という相談に、「あなたが終生その人を許せないとしたらそれでいい。ですが、もし恨んで恨んで恨み殺せば、その人は地獄に行きますが、あなたも地獄へ行くでしょう。人を恨むのは蜜の味、、、」。なんて回答なんです。

この小説も読んでいて痛いです。アパートの一室でモツを串に刺し続ける主人公。その向かいの部屋に住む妖艶な女。ある日「一緒に逃げて」と女に頼まれ駆け落ちをする、、、。油断していると切り倒されてしまいそうな、踏み込みの鋭さがあるのです。こちらの覚悟が試されるような作品だと思いました。

5段階評価で3つ。軽い気持ちで車谷長吉さんの小説は読めません。

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