2013年12月18日水曜日

ソロモンの偽証 宮部みゆき著


宮部みゆき渾身の長編小説「ソロモンの偽証」。1冊700ページ超のハードカバー本で3冊という、手に取るのをちょっと躊躇ってしまいがちなボリュームですが、そこは安心の宮部さん、いつも通りスラスラと読ませてくれます。

1990年クリスマスの朝、城東第三中学校で雪に埋もれた死体が見つかった。遺体は同校2年の男子生徒。彼は一月ほど前から不登校を続けていた。発見状況から見て自殺として処理され、普段の日常へと回帰していくかと思われた新学期、匿名の告発状が届く。「彼は自殺じゃない。本当は殺されたのだ。ボクはそれを見ていた___」。やがてマスコミでも報道され、学校が生徒が家族が暗闇に飲み込まれてゆく、、、。

第1部「事件」ではその副題の通り、城東第三中学校のまわりで次々と事件が起こります。落ち着いたかと思うとまた事件。現実であったなら、生徒も先生もその家族も大変だろうと同情したくなる展開です。

そんな大事件もやはり月日が経つと風化するもの。関係者も意識、無意識の別はあるものの、事件の記憶は頭の片隅に追いやり日常生活を営むわけです。そうしないと生きづらいですからね。そう、物語の中でも自分が知り得た決着に納得出来ず、生きづらい人がいるのです。事件の真相を、あるいは深層を知りたいと願うことから行動を起こす生徒がいました。

その生徒「藤野涼子」さんは事件を検証するため、夏休みを利用した課外授業という形で裁判を開くことを決意します。そして事件を捜査、検証する様子を描くのが第2部「決意」。つづく第3部「法廷」ではまるごと法廷劇です。そこで誰もが薄々感づいている真実が明かされていくわけですが、、、。

第1部冒頭の一節「子供って何も知らない。だけど、子供はほんとは何でも知ってるんだ。知りすぎるくらい__フィリップ・K・ディック(まだ人間じゃない)」の言葉は真実を突いていると思います。そうなんですけど、弁護人「神原和彦」くんのようなスーパー中学生いるかなぁ、、。

学校のあり方、マスコミ報道のあり方、保護者のあり方。軽いミステリの仮面の下で、そういったものを問うた作品なのでしょう。丁寧に描くために、この長さが必要だとは思いますが、少し冗長かもな、、という印象は否めません。

5段階評価で3つ。安心の宮部さんですからね。面白いし、読むのには苦労しませんけど。


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