2013年10月13日日曜日

「夏彦の写真コラム」傑作選① 山本夏彦著 藤原正彦選


コラムを書かせたら右に出るものはいない「山本夏彦」。2002年87歳で鬼籍に入るまでコラムを書き続けました。

夏彦翁はよく「辛口コラム」と評されます。確かにそういう面もありますが、何事にもただ文句をいい、怒りをぶちまけているだけの「コメンテーター」の類ではありません。彼らのように、自分のことを棚に上げ偉そうに振る舞う、そういった嫌味なところがないのですよ。常々ご自身のことを「ダメの人」と言ってたくらいですからね。

この本の中で私の好きなコラムをひとつ、抜粋で紹介します。タイトルは「汚職で国は滅びない」。

リベートや賄賂というと、新聞はとんでもない悪事のように書くが___、リベートは商取引にはつきもので悪事ではない。それを貰う席にいないものは悪く言うが、それは嫉妬であって正義ではない

我々貧乏人はみな正義で、金持ちと権力ある者はみな正義でないという論調は、金持ちでもなく権力もない読者を常に喜ばす。ただで喜ばすことができるから、新聞は昔から喜ばして今に至っている。これを迎合という

戦前の新聞は政財界を最下等の人間の集団だと書くこと今日のようだった。それをうのみにして若者たちは政財界人たちを殺したのである。汚職や疑獄による損失は、その反動として生じた青年将校の革新運動によるそれと比べればものの数ではない。___青年将校たちの正義はのちにわが国を滅ぼした。汚職は国を滅ぼさないが、正義は国を滅ぼすのである

今も新聞は政治家を人間のくずだと罵るが、我々は我々以上の国会も議員も持てない。政治家の低劣と腐敗は、我々の低劣と腐敗の反映だから___

夏彦翁は世の中に漠然と漂う多数の声、常識に真っ向から切り込みます。それにしてもマスコミの情報操作というのはオソロシイですね。意識してのことなのか無意識なのかはわかりませんが、、。

このコラムが書かれたのは昭和55年(1980年)ですけど、今の世も何も変わってませんよね。

5段階評価で5つ。何年経っても色褪せないコラムです。


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