2013年10月7日月曜日

64(ロクヨン) 横山秀夫著


警察小説の第一人者、横山秀夫さんの渾身作「64ロクヨン」。しばらく体調を崩されブランクがあり、7年ぶりの作品です。その思いが弾けたのか、ハードカバーで647ページもの大長編。

これは「陰の季節」「動悸」「顔 FACE」に続く、「D県警シリーズ」の一作。主人公は元刑事課で警務部秘書課広報官になった「三上善信」。「陰の季節」での主人公、警務課調査官「二渡真治」も脇に回り暗躍します。三上と二渡は同期で階級はどちらも警視。

題名の「64」とは昭和64年に起きた未解決の誘拐事件のこと。物語はその14年後が舞台です。その未解決事件に、三上の娘の失踪、警察庁長官の視察などが絡み合う。刑事部と警務部、キャリアとノンキャリア、上司と部下、警察とマスコミの確執。それぞれの立場でそれぞれの思いが交錯します。相変わらず心理描写が細かい。事件よりも人の心理、横山作品の特徴ですね。

短編が多い横山警察小説の中で異色の分量。人によっては、ただ冗長に感じるかもしれません。特に全体を把握できるまでの前半は、我慢を強いられる可能性があります。それが後半、謎が紐解かれていくにしたがい物語は急に加速。張り巡らされた伏線が綺麗に収束していくさまは見事です。

もう平成も25年経ったのですね。たった7日間しかなかった昭和最後の年、昭和64年も遠い昔、、、。

5段階評価で4つ。☆5つと言いたいところなんですが、ちょっと力が入りすぎちゃったかな、ってことでマイナス1。横山秀夫ファン以外が手を出すには、すこし勇気がいる本の厚さ。でも面白いから読んでみて下さい。


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