2013年12月21日土曜日

モールス アメリカ/イギリス映画


2010年公開(日本公開は2011年)の「モールス」。二昔前の「モーリス」っていう耽美な映画を思い出し、人の名前か、なんて考えましたが、モールス信号のことでした。監督マット・リーヴス、主演はコディ・スミット=マクフィークロエ・グレース・モレッツ

1980年代のニューメキシコ州ロスアラモス。雪に閉ざされた田舎町に住む12歳の少年オーエンは、学校でいじめられ孤独な毎日を送っていた。そんなある日、隣にミステリアスな少女アビーが引っ越して来る。寒い中彼女はいつも裸足だった。アパートの中庭で出会い仲良くなった二人は、壁越しにモールス信号で会話するようになる。そのころ町では残酷な連続猟奇殺人事件が起きていた、、、。

ある日の夕方、私は何となくダルく少し眠かった。こういう時は静かな環境よりも、つまらない映画やスポーツを観たりするとよく眠れます。この日もそういう睡眠導入剤のような映画を求めケーブルテレビを探っていて、この映画に行き当たりました。

チャンネルの解説には「連続猟奇殺人と、幼いふたりのピュアな初恋の行方を描く。出演は「キック・アス」のクロエ・グレース・モレッツと「ザ・ロード」のコディ・スミット・マクフィー」なんて、つかみどころのないことが書いてあるのも気に入りました。

しかし映画が始まると眠気は吹き飛んでしまいました。わけもわからず冒頭シーンからひきこまれ「なんだこれは?」と動揺しているところへ、オーエン少年が登場。この少年の眼の動きがとてもいいのです。そして裸足の少女アビー。もうこの二人から目が離せなくなってしまいました。

このアビー役のクロエ・グレース・モレッツはリメイク版「キャリー」を演じているのですね。今後も注目の若手です。ナタリー・ポートマン以来の衝撃を受けました。

原作「MORSE -モールス-」は、2008年スウェーデンで先に映画化されています(邦題「ぼくのエリ 200歳の少女」)。今度スウェーデン版も観てみよう。

5段階評価で4つ。キャスティングの勝利ですね。偶然いいものを見つけました。


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2013年12月18日水曜日

ソロモンの偽証 宮部みゆき著


宮部みゆき渾身の長編小説「ソロモンの偽証」。1冊700ページ超のハードカバー本で3冊という、手に取るのをちょっと躊躇ってしまいがちなボリュームですが、そこは安心の宮部さん、いつも通りスラスラと読ませてくれます。

1990年クリスマスの朝、城東第三中学校で雪に埋もれた死体が見つかった。遺体は同校2年の男子生徒。彼は一月ほど前から不登校を続けていた。発見状況から見て自殺として処理され、普段の日常へと回帰していくかと思われた新学期、匿名の告発状が届く。「彼は自殺じゃない。本当は殺されたのだ。ボクはそれを見ていた___」。やがてマスコミでも報道され、学校が生徒が家族が暗闇に飲み込まれてゆく、、、。

第1部「事件」ではその副題の通り、城東第三中学校のまわりで次々と事件が起こります。落ち着いたかと思うとまた事件。現実であったなら、生徒も先生もその家族も大変だろうと同情したくなる展開です。

そんな大事件もやはり月日が経つと風化するもの。関係者も意識、無意識の別はあるものの、事件の記憶は頭の片隅に追いやり日常生活を営むわけです。そうしないと生きづらいですからね。そう、物語の中でも自分が知り得た決着に納得出来ず、生きづらい人がいるのです。事件の真相を、あるいは深層を知りたいと願うことから行動を起こす生徒がいました。

その生徒「藤野涼子」さんは事件を検証するため、夏休みを利用した課外授業という形で裁判を開くことを決意します。そして事件を捜査、検証する様子を描くのが第2部「決意」。つづく第3部「法廷」ではまるごと法廷劇です。そこで誰もが薄々感づいている真実が明かされていくわけですが、、、。

第1部冒頭の一節「子供って何も知らない。だけど、子供はほんとは何でも知ってるんだ。知りすぎるくらい__フィリップ・K・ディック(まだ人間じゃない)」の言葉は真実を突いていると思います。そうなんですけど、弁護人「神原和彦」くんのようなスーパー中学生いるかなぁ、、。

学校のあり方、マスコミ報道のあり方、保護者のあり方。軽いミステリの仮面の下で、そういったものを問うた作品なのでしょう。丁寧に描くために、この長さが必要だとは思いますが、少し冗長かもな、、という印象は否めません。

5段階評価で3つ。安心の宮部さんですからね。面白いし、読むのには苦労しませんけど。


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2013年12月11日水曜日

アーティスト フランス映画


2011年公開(日本公開は2012年)のフランス映画。監督ミシェル・アザナヴィシウス、主演ジャン・デュジャルダンベレニス・ベジョ。監督さんも主演男優、女優さんとも、今作まで知りませんでした。第84回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演男優賞、衣装デザイン賞、作曲賞の5部門を受賞。長い歴史を誇るアカデミー賞で、作品賞をとった初めてのフランス映画となりました。

1920年代後期のハリウッド。サイレント映画の大スター、ジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)は駆け出しの女優ペピー・ミラー(ベレニス・ベジョ)と出会い意気投合。しかし映画がサイレントからトーキーへと急激に移り変わる中で、ふたりの運命は明暗をわける。

時代の波に乗ったペピーはスターの座をつかむ。しかしサイレント映画にこだわったジョージはスターの座から転げ落ちてしまう。妻を失い、屋敷を失い、質屋通いで食いつなぐジョージ。彼に残されたものは愛犬と、かつての栄光、サイレント映画のフィルムだけだった、、、。

1927年から1932年までの映画の街ハリウッドのお話。この1927年というのは世界初のトーキー長編映画「ジャズ・シンガー」が公開された年なんですよね。時代の転換点だったのでしょう。映画革命の裏で職を失った俳優や技術者、または職を得た人、悲喜こもごもだったかと想像します。

主人公のジョージは時代掛った男前といった感じでいい味出してますし、ヒロインのペピーのキュートさにも心奪われますが、なんといっても愛犬くんの演技が最高であります。彼に助演男優賞をあげてもらいたかったですね。

映画は全編モノクロ、音声はほぼ音楽のみ。ほぼ、といったのは、少しだけサウンドが出る場面があるのです。それがとっても効果的で、トーキー映画が初めて上映された当時を疑似体験したような気になります。気のせいですが。

5段階評価で4つ。モノクロって不思議です。色が見えてくる時があるから。


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2013年12月6日金曜日

シャッター・アイランド アメリカ映画


2010年公開「シャッター・アイランド」。監督マーティン・スコセッシ、主演レオナルド・ディカプリオ。 このコンビの作品は過去に「キング・オブ・ニューヨーク」「アビエイター」「ディパーテッド」とあり、本作が4回目になります。スコセッシ映画といえば、ひと昔前はロバート・デ・ニーロの名が浮かびましたが、最近はディカプリオなのですね。

正直なところ、私はディカプリオを苦手としていて、彼の主演作を観ることは殆どありません。アカデミー助演男優賞にノミネートされ、出世作といえる「ギルバート・グレイプ」での知的障碍者役はとても好きでしたけどね。

精神疾患のある犯罪者を隔離幽閉する孤島「シャッターアイランド」。そこで一人の女性が忽然と消えた。残された謎のメッセージ「67は誰だ?」。事件捜査のため連邦保安官テディ・ダニエルズ(レオナルド・ディカプリオ)は新しい相棒チャック(マーク・ラファロ)ととも島を訪れる。物々しい警備の収容所。何かを隠している様子の院長コーリー(ベン・キングスレー)以下の職員たち。疑心暗鬼に陥ったテディは、次第に相棒のことも信じられなくなっていく、、、。

ディカプリオ見直しました。いい感じのオッサンになっています。ちょっとジャック・ニコルソンに似てきたか、と思いました。それと院長コーリーのベン・キングスレーがいい。胡散臭さ満点であります。

いわゆるドンデン返し系の映画です。気持ち悪いシーンを我慢して最後まで観ましたが、あまりにも普通なラストでちょっと肩透かしを食ったような気分になりました。最後にもうヤマあるのでは、と期待したのですけど、、、。

5段階評価で2つ。スコセッシはやはり「タクシードライバー」なんですよ。


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